マーリンである必要はあったか?「マーリンⅡ 七つの魔法の歌」


七つの魔法の歌 (マーリン 2)

七つの魔法の歌 (マーリン 2)


アーサー王伝説で史上最大の魔術師とうたわれた、謎にみちたマーリンの少年時代の秘密をあばくという趣向の、冒険ファンタジーの第二弾です。


1巻を読んだ印象では、面白いことは面白いけれど何かが足りないようなそんな印象でした。
2巻ではそれがちょっと払拭された感がありました。


スタングマー王をたおし、崩壊した死衣城から見つかったフィンカイラの宝のひとつである花琴を使って、荒廃した闇の丘を再生するという使命をうけたマーリン。
以前、エムリスと呼ばれていた少年はこのときから、マーリンの名で呼ばれることになったのです。


ところが、思春期に付き物の、自分へのうぬぼれや力への過信によって躓きかけてしまったマーリンは、自分の強い願いを押し通し、とある人をむりやりフィンカイラに呼び寄せてしまう。
結果として、マーリンはその人を深い危機へと連れ込んでしまったわけですが。
そうして、愛する人の命を救うべく、マーリンの冒険の旅が幕を開けます。


命を救う霊薬をもとめて、黄泉の国にいくために必要な魔法の極意をあらわしているのが「七つの魔法の歌」だということですが。
七つの歌は、必ず順番を守ってやりとげなくてはならないものらしくて、おまけに飛ばすことも出来ない。
それでマーリンとリアたちは一から順番どおり、フィンカイラ中をあっちへいったりこっちへ行ったりするはめになるわけです。
ひとつひとつの冒険はそれなりに面白いし、先を読ませる力もあると思います。
まぁファンタジーとしては正統派ということになるんでしょうが。歌がヒントになって冒険を導いていくというストーリーは以前もありました。(ネシャン・サーガとか)
RPG的なものもあるかもしれないですね。


2巻で私が面白いなあ、と思ったのは途中から冒険に参加する道化師バンブルウィという人物でした。
道化師としては半人前もいいところで、人を笑わすどころかかえって憂鬱にさせてしまうほどの才能(?)の持ち主。
いつか人を笑わせることを目的にしているのですが、なかなかそうはなりません。
マーリンたちもこの道化師のことを最初は、疎ましく思っていて、冒険の旅についてくることをどうしてついてくるんだ?みたいな目で見ていたんです。
それが冒険をくりかえしていくうちに、だんだん仲間として見られるようになっていくんです。
この道化師なる人物の言動、本文中ではみんな面白くない、と言っているくせに、読んでる私にはけっこう面白かったのです。
大笑いとまでいかなくても、プッと吹き出してしまうくらいは。


ラスト近くで起こった出来事で、ある重大なことをやり遂げます。まさに道化師という身分にふさわしく?おかしさがこみあげてくるような、そんな行動。
これだけは素直によかったことだと思えました。


のちの時代で、マーリンの成したといわれるものごとにつながるシーンなどもあり、何とかして筋道つけようとしている作者の努力のあとも感じました。


全体としてファンタジーとしてはいい線いっていると思ったのですが。本当なら★を4つくらいあげたいくらいだと思いました。ひとつ減らしたわけは、より根本的な問題に絡みますが、この話があの有名なマーリン伝説とは全く関係のないファンタジーだったとしたら、もっと面白いものになったのではないか?と思ってしまったからです。


マーリンの失われた少年時代を描くという作者の意図は買ってあげたいけれど、どうもイメージが追いつかないようなそんなもどかしい思いがつきまといます。
ただの冒険ファンタジーということなら全く構わないけれど、マーリン伝説が絡むとなると、ちょっと無理があるようなそんな気がしました。


これから読まれる方には、絶対のおすすめとは言わないけれど、まぁ読んでもいいんじゃないの?それなりに面白いよ、とだけ言っておきます。
それとリアの正体というか出自がわかったのですが、これはちょっと意外でした。あってもよさそうなもんですが、思いつかなかった。正直そうくるとは思わなかったです。


引き続き、3巻にいきます。もうこうなったら乗りかかった船なので、いけるものなら最後までついてこうかと思っています。