「トリツカレ男」にとりつかれそう!!

トリツカレ男

トリツカレ男

いしい作品、2作目です。これはページ数が166ページとちょっと短め、でしたがそれだけにぎゅっと濃縮されたものがあるように思えました。
ジュゼッペとペチカの心の交流。なんかとてもよかった。心がほのぼのしてきます。

冒頭を読んだとき、次から次へと興味のおもむくままに、なんて気移りのはげしい男なんだろう!とジュゼッペのことをそう思ったのですが。ちょっとあきれ気味に…

でもこれら、その時期その時期でトリツカレていた物事が、のちにぴたりとハマっていくのを読んだとき。そうか!と思いました。こうくるのか!と思って、何だかとってもうれしくなりました。
ただ、世のなかのいろんなことに興味をしめし、次々きわめていくだけだったら、このトリツカレ男も、面白いけどただの変人でしかなかったのかもしれない。けれど、ジュゼッペがペチカに出会ったことですべてが変わっていった、と思うんです。

ペチカのことだけを想って、ハツカネズミの友だちに頼んでようすを見てきてもらうジュゼッペ。彼女の笑顔のなかにくすみがあるといって。なんて敏感!これも愛のなせるワザなのでしょうか。
そしてジュゼッペはついに、ペチカの本当のくすみの原因に気がつく。普通だったら、そういう状況をいいことに、自分の有利なように運ぶんでしょうが、彼は違っていた。
ただひたすら、ペチカのために、彼女の本当の笑顔を見たいがために。

あのいちばん寒さの厳しかった夜に。凍りつきそうになりながらも、ペチカの部屋の前で待っていたジュゼッペ。なんてせつなく、心が痛む話でしょうか。
まさに、純愛。枝葉を極力まではぶいた内容になっているのも、彼らふたりの愛を際立たせるようで、よかったように思えます。

わきに出てくる人物もそれぞれいいですね!ツイスト親分に、レストランの主人、ハツカネズミくん、ペチカのお母さんなどなど…
ジュゼッペもこんな人、現実にはいないんだろうけど、妙に惹かれる人物です。そしてタタン先生とのエピソード! あれは最高でした。心にぐっときます。


友だちや恋人、家族など、大切なひとにこの本を薦めたい、と私も思いました。まさに、贈り物に最適な本でしょう!