「天と地の守り人 第二部」上橋菜穂子


天と地の守り人〈第2部〉 (偕成社ワンダーランド 33)

天と地の守り人〈第2部〉 (偕成社ワンダーランド 33)


さて、守り人シリーズです。やっと読みました、第二部。
ちょっと間が空きすぎて、かえって時間がかかってしまったような気もするけれど、全体的にいえば面白かったですね、今回も。


カンバル王国に向けて旅立ったバルサとチャグム。
隊商に加わって、盗賊に遭遇したり戦ったり、逃げ回ったり、と今回も大変でしたが。バルサ、傷だらけになっても凄いです。まだまだ現役、がんばりつづける彼女の姿になにやら感動を覚えてしまったほどでした。

チャグムも成長してました。なかなか堂にいった態度でした。なんにつけても・・・。そんなチャグムを見守るバルサの目。お母さんの視線なんですね。何かすごくいい感じです〜。

ロタ王国のイーハン王子の親書をもって、カンバル王のもとに急ぐチャグム。カンバルの不思議な存在、牧童と出会ったり、〈王の槍〉であるカームという人に捕まってしまったり、まあ散々な目にあってしまいますが、でも最後の場面での彼は立派でした。
見事なホイ(捨て荷)でしたね。
カンバルのラダール王というのはそれに比べて、ちょっと意志が弱く頼りなそうで、おまけに嫉妬深いような印象を持ちましたが、チャグムの行為によって、危機一髪、悲惨な道から逃れました。

あとになって、それでもチャグムが自分のしてしまった行為に関して恥辱を感じてしまう、ということがあったけれど、それもバルサの一言によって消えてしまう。そこのところもよかったです。


そしてナユグの世界。この世と重なり合うように存在している世界の存在が今巻では強く、強く感じられました。
チャグムとナユグの係わり合い、気にかかります。第1巻で精霊の卵を抱いていたときもそうだったけれど、卵のない今でもチャグムはナユグとの強い係わり合いを感じているのです。
そこには、何かがあるはずなのでしょう。それが何か? あと一冊、残されたシリーズの最後にわかるのでしょうか。
ナユグに春がきたときに、この地上でも影響が起こる。
カンバル王国も危ないけれど、それ以上に危険なのが、チャグムの故郷、新ヨゴ皇国なのです。


故郷の危機に心を残しながらも、ロタ王国へと兵を進めるカンバル王に付き従っていかねばならぬチャグム。
そしてそんな彼の代わりに、新ヨゴへ帰ってタンダやトロガイと接触をもち、何とか危機を回避しようと試みるバルサ
侵略者タルシュ帝国から、北の大陸はわが身を守ることができるのでしょうか。


またタルシュ帝国のなかにも、ラウル王子という人がいます。タルシュの〈太陽宰相〉アイオルの懸念は、先頭を切って帝国をひっぱっていく存在であるラウル王子に対するものでした。・・・ アイオルがふと思い出した男、ヒュウゴの「この帝国はのびきった革袋のようなものだ」という言葉・・・それがタルシュ帝国のいまの状況を端的に現しています。

どの国にとっても、大いなる危険が潜められているのです。これにどんな決着がつけられるのか。気になるところです。


初めての戦いにおもむくことで動揺するチャグムに、バルサがかける言葉も印象的です。戦争によってやむなく人を殺してしまったとしても、そのことを決して忘れないようにすること、という… 楽になる道なんてどこにもない、という心の縛りは今もバルサを縛っているのでしょうか。
短槍使いとして、女用心棒として生きてきたバルサの人生のすべてがこめられているような言葉でした。


児童書でありながら、それ以上の重みをもった作品。これは子どもだけではなくて、大人にも読んでもらいたい作品です。
その最後がどうなるのか、あと一冊。心して待ちたいと思います。