「ロミオとロミオは永遠に」恩田陸



『読書会』を読んで、久々に恩田陸の本を読んでみようと思いたちました。ずっと読まずに積んでいた本たち。あまりにかわいそうで・・・3月は恩田陸の月、とちょっと洒落込んで〜 読み始めました。

その一冊目。

ハヤカワSFシリーズ(去年、文庫化もされましたが)となっていて、ちょっと怖れをなしていたのですが。
その心配は杞憂でした。

っていうか、これは笑えました!

もう最初から20世紀に関するパロディが満載で〜
もうどうしてもっと早く読まなかったのか、と自分に渇を入れました(笑)。


何より設定がぶっ飛んでいる。

「日本人だけが地球に居残り、膨大な化学物質や産業廃棄物の処理に従事する近未来。それを指導するエリートへの近道は、『大東京学園』の卒業総代になること」であり、「苛酷な入学試験レース(具体的にはどういうものかは?)をくぐりぬけた」アキラとシゲルという2人の少年たち。

彼らを待っていたのは・・・・という話。


いや、このアキラとシゲルの2人。いいコンビですね。
最初は2人でこのまま卒業まで突っ走るか、と思いきや。
っていうか、これも必然?
アキラが脱落。ここへ入れられると、もういなくなったものとみなされる「新宿」クラスに編入することになり。

この新宿クラスの面々にとっては、学園を脱走することが最大の目標になっている。
だって、このまま学園を卒業できたとしても、彼らに待っているのは危険な廃棄物の処理や、地雷郡の処理という苛酷な運命だけだったから。

とてもまともな人生は送れない。脱走することにしか、それを回避するすべはないっていうことで。

アキラもまた一蓮托生の運命に落ちてしまったわけですが。

最後までどうなるか、どうなるかひっぱってくれて、手に汗握りましたね(月並みな表現ですが)。


2人以外にも、また個性的な人物がいっぱいでてきます。

タダノ、っていう一種、異様な教官。アキラを目の敵にしてる人物。(これが何故なのか、っていうのはあとでわかりました)
彼もまたおもしろい存在でした。
教官室にこもって、アキラたちの履歴の載ったPC画面とか指で触ってるシーンなどちょっと怖気が・・・

またアキラたちとともに戦い、脱走を実行した仲間たち、彼らもまたいい味だしていましたね。
シマバラとか。イワクニとの、例の「バローム・クロス!」とか… 最後が悲しかったです。

トンネル掘りのオワセとイワキの最後のエピソードは涙なくしては語れません。

それと弟のふりをして学園に入学し、それ以来、一室にこもって隠れて過ごしていたという、少女キョウコ。
外の世界を見たいといいながらも、恐怖のために一歩を踏み出せなかったことなど。


もう、あちこちぐっとくることばかりで、最後まで気をぬけませんでした。


ラストにはあっと驚く展開が待っていました。
まさかああくるとは。
思いもかけなかったですね。

あれから彼らはどうなってしまうのかなあ。あれで、いいのかなあ?という疑問もなきにしもあらず、ですが。

けっこう厳しいものもあるかもしれません。
いわば、これからの日本を生きていくことになったわけですから。


ただ、アキラたちのライバルみたいに扱われていた人物、リュウガサキは、何か知りきれトンボみたいな形で出番が終わってしまい、あれからどうなったのかな?なんて思わなくもありませんでしたが。


もうほんと、本まるごとが20世紀のオマージュみたいな感じのする作品でしたね。よかった、です。