「片眼の猿」道尾秀介

片眼の猿 One‐eyed monkeys

片眼の猿 One‐eyed monkeys

初めて読んだ作家さんでした。どうして手にとったかというと、久しぶりに図書館にいった時に、新着コーナーで目に付いたから。それまでにあちこちでタイトルを目にしていたせいもあるかも。

とりあえず、初めて読んだ作家さんなので、どんな作風とか文体とか全くわからない状態で読み始めました。書評なども全く読んでない。先入観なしの読書でした。
読み始めて、冒頭部分でちょっと既知感を覚えました。全く忘れていたけれど、私はこの小説をケータイでダウンロードして冒頭部分だけ読んでいました。
タイトル見たことあったのも、そのせいかも。
むかしの古いケータイにまだ入っていました。冒頭の数ページというところですが。

恋人が自殺した過去があるとか、その恋人は自分の顔を見ても不快な反応をしなかったとかナントカ。
確かに覚えてました。(覚えてたことすら忘れてた)

このことから主人公が自分の容姿に何らかのコンプレックスを抱いているのだろう、と思いましたが、それ以上は深く考えもせず、その時はそのまま読むのをやめてしまいました。


今回、あらためて読んで、やっぱり主人公は何かのコンプレックスがあって、周囲の人から浮いているらしい。
耳を隠していることから、耳に関するコンプレックスなのだろうと。

そしてその主人公、三梨幸一郎のほかにも、同じく自分の目に関するコンプレックスを抱いているという、夏川冬絵という女性がいます。


最初の私の印象では、三梨は、ものすごく大きいダンボのような耳(しかも可愛い)が生えている、というばかばかしいものでした。冬絵はまるで宇宙人のような、顔いっぱいにせまるような大きな目、というのを想像してしまいました。
ふつう考えたら、こんな容貌の人間なんていっこないのにね。


登場人物の容姿、事情など全くわからないまま、話は進行していきます。起きている事件も同じ。いまいちピンとこない。
あやしい楽器店のおやじ(企画部長)とか出てくるし。
三梨の仕事は探偵業。しかも耳をつかった特技、盗聴の仕事。
冬絵も似たような探偵社の人間だったが、わけあって三梨の探偵事務所に引っ越してきた。


そこで起こる殺人事件。
途中で、三梨の、かつての恋人秋絵のお墓参りのシーンなどがさしはさまれていて。
あとから考えたら、このときの秋絵の両親の会話、けっこうキーになってましたね。そんなことちっともわからず、最後までいきました。


ラストには本当に驚きました。ええ!?ウソでしょう?って感じで。
それまでは普通のノリのミステリ小説だったのに、最後になっていままで起きたこととか、登場人物たち(三梨のアパートの住人とか)のこととかわかって、目がテンになりました。

結局、コンプレックスに負けず、がんばってる三梨や冬絵はすばらしい!ってところでしょうか。

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ときわ姫 > 私がダウンロードして読んだところは、「電車で女性がいつも窓の外を見ていて・・・」という章でした。小話みたいでオチがあったので、読んだとききっと彼女は目が大きいと思いこんでしまったのです。今度小説を読んだときに、それを思い出したので勘違いしてしまいました。でも楽しめたので良かった。
私は他のも読んでますが、作風というのはよく分かりません。深刻なはずなのに急に軽くなると思ったことはあります。 (2007/04/01 14:07)
北原杏子 > ときわ姫さんもダウンロードして、お読みだったんですね。
私も素直に驚けたのでよかったと思います。また他の作品を読むかどうかはわからないけど・・・いつか読むときにはときわ姫さんの感想を参考にさせていただきます。 (2007/04/01 20:05)