「夏の名残りの薔薇」恩田陸

夏の名残りの薔薇

夏の名残りの薔薇

山奥のクラシックなホテルで、毎秋開かれる豪華なパーティ。その年、不吉な前兆とともに、次々と変死事件が起こった。果たして犯人は…。

ということで、期待して読み始めました。山奥のホテルで殺人事件? となれば、純粋なミステリーを期待したとしても、間違いではないでしょう。
けれど、蓋をあけたら、ちょこっと違ってました〜。

ミステリー=推理物、ではなく。ミステリー=幻想小説だった、と。

とまあ、こういうわけでした。

そしてこれくらい恩田陸らしい小説はないんじゃないだろうか、とも思いました。それがいいか悪いかはおいといて。

第一変奏から第六変奏まで。これでもかこれでもか、と翻弄されて、最後はいったいどうなることかと思いました。
最後は正直、なんだかなーと釈然としないものを感じましたけれど。


そしてこの小説は、映画『去年マリエンバートで』にインスパイアされた作品ということでしたが、私はその映画については全く未知の状態でして・・・。かろうじてタイトルくらいは聞いたことはあった、とこの程度でした。
だから、正直いって、映画の場面の引用部分は何が起こっているのか全くわからず、なんだかふしぎなものを読んだ〜という印象でした。あの引用部分がなければ、もっとすっと入っていけたような気もするんですが。
でもやはりそれがないと、きっと違うものになっちゃうんでしょうね。


要するに思い込みで、自分がその人を好きなのだと思い込まされてしまったという話?なんでしょうか。ちょっと怖いかも〜。
「この殺人事件は真実か幻か!?」っていう帯の文句がありましたが、全編そんな感じで、読者は右へ左へと作者の思うがまま。最後までいくしかありません。

この実験的小説を受け入れられるかどうか、に恩田陸フリークになれるかどうかの瀬戸際になってるような気もします。その点でいうと、私はまだまだかなあ。読み込みが足りないかも。


このなかでは、三人の老女の存在が強く、彼女らの真にせまったお話を聞くのは面白かった、ですね。

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EKKO > こんにちは。この本は、評価が分かれていますね。おっしゃるように、この世界観を受け容れられる人はかなりの恩田フリークといっていいのかも・・・。私は、こういう、不安感いっぱいにさせてくれる恩田ワールド、たまらなく好きなんですよ〜(笑) (2007/04/15 15:34)
kanakana > 正直言って「去年、マリエンバートで」の引用はウザかったです(笑)でも、「その記憶は正しいの?自分が覚えていたいように覚えているだけじゃないの?」みたいなものが感じられて、ストーリーは面白かったです。 (2007/04/15 22:52)
北原杏子 > EKKOさん、こんにちは。レスがすっかり遅くなってしまいました。 不安感いっぱいにさせてくれる恩田ワールド、私も好きですよ! ただこの作品では、引用部分が退屈だったなぁなんてだけでね。 (2007/04/28 13:23)
北原杏子 > kanakanaさんもいっしょですかねえ?引用部分・・・なければもっとハマったかも!? 人間の記憶のあやふやさ、について、なんとなく考えてしまう作品でした! (2007/04/28 13:24)