「二百年の子供」大江健三郎

二百年の子供 (中公文庫)

二百年の子供 (中公文庫)

某SNSの読書会の課題本になった本。大江健三郎、初めてだと思っていたら、短大時代に課題か何かで『死者の奢り』を読んでいたことに気がつきました。

今回はそちらに書いた私のコメントをここへ貼り付けることをお許しください。
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文章は最初、読みにくかったけれどそれも読んでいくうちに慣れてきました。
読む前に、勝手に想像して、二百年前の世界にタイムスリップする子どもたちの冒険談だと思い込んでたんですが、ちょっと違いました。

もちろん子どもたちは冒険はするけれど、ただそれだけではなかった。
真木さんを中心とする三人組の家庭の事情がだんだん見えてくるうようになると、いろいろ重たいものにも気が付いてきます。

「ベーコン」という犬は、その中で重要な役回りをはたしているように思えました。
実在の犬というより、想像の世界に生きている、精神的なものじゃないかな、と思ったり。
真木さんの心の支え?なのかな。
三人組の心の中心にある存在なのかもしれない。

その三人組も、確かに現実にはいそうにない子たちですねぇ。
幻想的って意味でのファンタジーでしょうか。

この話は、過去や未来に行ったりしますが、どこか夢のなかの出来事のようにも思え、はっきりしませんでした。
木のうろに寝ているうちに時を越えてしまう、という設定もなかなか無いですよね。
私は何となく、子どもたちの体はそこにあって、精神だけが時代や場所を越え、飛んでいってしまっているのかと思っていました。
だけど、最後の真木さんが歩いて帰ってきた場面などを見るとそういうわけでもなかったんですよね。
なんで歩いて帰ってこれたのか、納得がいかない気もしましたけど、理屈で考えてはだめなんでしょうね。


個人的にサクちゃんが好きでした。
偶然、うちの長男と同じ漢字なんです。愛称も同じ。で、親近感がわきました。


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以上です。自分の思い込みが入ってるところがあるので、この感想は万全なものとはいえないでしょう。
大江健三郎が子供のために書いたファンタジーというところなので、読みやすくなっています。
興味をもたれた方は実際に読んでみてください。