『緑の模様画』高楼方子


緑の模様画 (福音館創作童話シリーズ)

緑の模様画 (福音館創作童話シリーズ)


私の大好きな高楼方子さんの本〜♪ ということで、期待して読み始めましたが、まさしく期待通り、というかそれ以上の手ごたえを感じました。

海の見える坂の街、塔のある家、丘の上の学校、寮生活、三つ葉のクローバー<シャムロック>、紅茶とクッキー、レースのハンカチ・・・
そして極めつけは『小公女』。
これらのアイテムを見ただけで、好き!と緑の天蓋に囲まれた水色の空に叫んでしまいそうです。

三人の少女・・・まゆ子、アミ、テトのまえに次々に現れる茶色の瞳の青年、厳しい眼差しで少女たちを見つめてくる白髪の老人、かつて寮生に失恋して塔から身を投げて死んだとされる若者の影法師。

ページを繰るごとに物語が鮮やかに描き出されます。
ストーリーの面白さはさることながら、文章を目で追っているうちに、私はいつしか自分の故郷の町を思い返していました。

懐かしい、というんでしょうか。読んでいる間、時々目頭が潤んだことを白状します。三人の涼やかな少女たちのすがたを読むにつけ、少しだけ自分の少女時代のことを思い出したのでした。
それとともに街の姿をも。
この本のような美しい坂の町などではありませんけど。

三人の少女たちとひとりの青年との出会いと別れ・・・早春から初夏へとほんの短い季節の移り変わりのあいだに起こった不思議な物語でした。
『小公女』をまた読んでみたくなりました。英語版は無理だけど、ちょっと落ち着いた装丁の昔ながらの素敵な本で! 

この本の装丁も素晴らしかったです。とくに、木下透さんが語るという趣向の第三章の活字が緑色で印刷されていること。
ちょっとしたことだけれど、気が利いてますね。
クローバーをあしらった、切り絵のような印象のカバー装丁も本の内容にあっていて素敵でした。