読書

トロール・フェル〈下〉地底王国への扉

トロール・フェル〈下〉地底王国への扉

下巻読みました。下記は上下巻二冊を読んでの感想です。


思ったより面白かったです。それが意外でした。
本当は、装丁やページの四角く切り取った枠が気になって、きっと今どきのファンタジーブームに乗っかった作品なんだろうな、っていう偏見を持ってました。


北欧の香りする、骨太の物語でした。
トロールやその他の怪物の描写がとてもリアルで、北欧の神話の世界がいまも息づいている時代の話という印象でした。

貯水池の中に棲んでいるというグラニー・グリンティースという怪物や、家のなかの小妖精(小人?)らしい、ニースとか、トイレの中に棲んでいるラバーという生き物など、とても魅力的に描かれていました。

ニースというのは、ひょっとして「ニルスのふしぎな旅」に描かれたニルスと関係あるのかな、と思いました。
舞台も同じですしね。部屋のなかを勝手に掃除してくれるニース、うちもひとり欲しいです。お粥にバターやハチミツを入れて、置いてお礼するというのも、何かよいですね。
実際にそういう習慣があるのかもしれない。(現実にいるいないは別にして)


主人公ペールの双子の叔父さんは本当に酷いですね。まさに豚のような、動物的おぞましさです。ラストでああいうことになって、いい気味とすっとしました。
トロールの宮殿というもまた実にいい。お山の天井がぽっかりと空いて・・・という場面。幻想的でした。


いろんな本を連想させる物語でした。前述のニルスしかり…トロールのお山の宮殿というのでは、ジョーンズの「呪われた首環の物語」を思い起こさせますし、
水車小屋というのでは「クラバート」を、
ヒルデのお父さんが乗っていってしまったバイキング船では、あずみ椋の漫画「緋色い剣」等など…

ストーリーも単純でいながら、王道を行っていて、子どもが読んだらすぐにハマっていたでしょう。

酷い仕打ちをする悪い叔父さんたち、主人公の味方になってくれる女友達、妻子をほったらかしにしてバイキング船に乗っていってしまったお父さん、それを嘆きながらもせっせと家庭を守る(しかない)お母さん、昔を懐かしみ英雄詩を愛するおじいさん…


決してめずらしい設定ではないけれど、それだけにしっかりと話が織られていて、読んでいて安心できました。