「デイルマーク王国史」読了

さてデイルマーク王国史の4巻目。完結編です。・・・もう面白かったです!これを読んで、あらためてこの4巻の話がひとつづきの大きな話なのだということが実感できて、とても嬉しかったです。
そして、この前の3巻はこのためにあったか!と思いました。読んでいて、あちこちに、3巻を思わせる記述があってにやりとしていました。


1巻、2巻は同時代の話。3巻は先史時代の話。そうしてこの4巻は、というと、現代のデイルマークとその200年前の時代が交錯します。
主人公は、現代に生きる10代の少女メイウェンと、その200年前の時代に生きるミット(2巻で登場)。
この2人の視点が行ったりきたりします。これも舞台となっている時代を象徴することなのかしら…などと思いました。
それぞれの時代を代表する2人が出会ってどうなったか…


ミットの時代の、ある少女の身代わりを演じることになってしまったメイウェン。動揺しつつも、何とかしようと頑張るすがたには好感がもてました。
同じくミットにも2巻に登場した時以上に、いいなあという思いを抱きました。


他にも御馴染みの登場人物たちがいます。1巻に出てきた詩人(うたびと)のモリル。ちらりとモリルの兄のダグナーが出てくる場面もにやり、です。
2巻でミットとともに北部へと逃れたネイヴィス・ハッドソン。その娘のヒルドリダ(ヒルディ)。彼女は4巻ではあまりに変わってしまっていて、がっかりしました。
2巻のままいってくれてたらよかったのに。人間って変わるもんなんだなー、という感じです。ミットが彼女の言動に傷ついてる場面、メイウェンならずとも憤慨するところです。
弟のイネンはかわらず。これは喜ぶべきこと。
その他、1巻ででてきたキアランとか、3巻にでてきた人たちとか…もう豪華総出演!という感じで、思わず頬がにんまりとゆるんできてしまいます。


ヒルディの変貌もそうだったけど、その他の人物たちもみなそれぞれ恋愛中だったり、不倫中だったり、熱愛中だったり、いろいろです。よかったこと悲しかったことつらかったこと、さまざまな出来事が彼らのうえを確実に通り過ぎていったんだな、ということが自然にわかってきます。
巻末の解説にもありましたが、本当にこの話に登場する人たちは、みな現実に生きて動いている人間と同じなんだな、ということが実感できました。


あらためてダイアナ・ウィン・ジョーンズさんという、ひとりの作家のすごさを見せつけられた思いです。
読者をこんなに惹きつけ、魅力の虜としてしまうんですもの。いまの時代を代表するファンタジー作家といってもいいでしょうね。


最後、デイルマークを統一する王は誰か・・・最も読者の気になることでしょう。物語の途中で、もしかして、と思って、こうなったら面白いだろうけどどうかな?と思っていましたが、後半のある一エピソードで、やっぱりそうなんだ、と思って嬉しくなってしまった私でした。
これはファンタジーのお約束でしょうね。こういう細かいところをちゃんとおさえてるジョーンズさん好きです。


ラストの一言も効いてた。ばっちりです。
これ一冊を読み終えるのにいったい何度私は、にんまりとしたことでしょう!ですが、このラストでは最大級の笑みがうかんでしまいます。
その後の彼らはどうなるんでしょうか。自分のなかでいろいろ想像してしまいそうです。
巻末につけられた用語集でも想像力(妄想力)が爆走してしまったことはいうまでもありません。


こんな楽しい、まさに一粒で二度、三度楽しめる物語を紡いでくださったジョーンズさんにお礼をいいたい気持ちでいっぱいです。


ありがとう!!