悪党になりたい、いい子の話!?「ぼくは悪党になりたい」


ぼくは悪党になりたい

ぼくは悪党になりたい


これはかなりおもしろかったです。これまで読んだ中でも一番かな。
テンポがよすぎて、ついつい読み込んじゃって、時間がないのに読みきってしまいました。


主人公の兎丸エイジは17歳、高校生。なのに、母親は仕事で不在のことが多く、主婦がわりをしている。
今度も海外出張にいく母親に代わって、炊事、洗濯、掃除と家事全般を引き受けることになってしまう。
そんなある日、異父弟ヒロトが急な病気に倒れてしまって・・・
明日からは修学旅行。さてどうしよう!と困ったエイジが頼んだピンチヒッター。
母親の、緊急用アドレス帳から偶然えらんだその人物がこれまた、いわくありげな人物だったのだった!
それからエイジの平凡な日常が、がらがらと崩れていく。
とあることをきっかけにして。


・・・っていうような内容ですが。
(注意!ここから少しネタバレします)



たまたま頼んだ助っ人の男性… エイジはもう最初から、弟ヒロトの実の父親じゃないか、と勘ぐっていたのですが、それが実は・・・ってなノリで。
私なんかは、どうして?何の疑いもなく弟のお父さんだと思い込むのかね、もうひとつの可能性は思い当たらないの?と思ってましたが。
やっぱりなかなか当事者となると、思いつかないもんなのかもしれませんね。


その事実を知ってから、エイジは呆然としてしまって。
だんだん、どっか頭のネジがゆるんじゃったみたいに、暴走していっちゃうわけですけど。
その壊れっぷりがなんかよかったです。なんて言っちゃうと、御幣があるかもしれませんが。


ごくごく真面目な高校生だったエイジが、その事件をきっかけに、タバコをはじめ、親友の元彼女と…なんて展開にもなってしまったり。
果ては、その彼女アヤと家出して、大阪に逃げ込むなんてことしでかしちゃったりして。


どうしてこんなことに…? あんなことを知らなければよかったのに。結局、その事実から逃れたくて、エイジはそういう行動に出たんですが。


その壊れっぷりが何か痛快で、おもしろかったのでした。
もう、こうなったらとことん行くよ、みたいな。
思わず、エイジくん頑張れ〜と声援を送りたくなるくらい。


でも結局、飛び出た豆も元のさやにもどることになるわけで。
一応、ハッピーエンドなラストだけど。
家出した彼をあちこち捜し歩いたらしい、その人の打ったメールがちょっと心にひびいてます。


・・・心配しています、連絡ください。あきらめないで待ってます・・・。


待つのは得意だといった人のことをエイジは思い出します。
その直後、偶然にも彼らと会えたとき、その車中にエイジが見たもの。いないはずの人物、海外出張にいってる母親、亡くなったおじいちゃん。
その気配を感じたとき、エイジは本当に心から安堵するのです。
家族に囲まれてるって、感じて。


その後、帰国した母親の対応は何ともさらりとしたもんでした。ちょっとその母親の態度は何とも言葉になりませんが。
あの騒動のあいだ当然ですが、なぁんも知らないでのほほんとしてたわけですからね。
いいのか、これで!?と思っちゃいます。
まぁあれはあれでいいんでしょうね? 何とも豪快な母親です。


結局、エイジのまわりにはちょっと普通とは違ってるけど、いい家族、いい友人がいたわけです。
元気がとりえの(?)小学三年生の弟ヒロトくん、とか
ロリコン育成シュミレーションゲームにハマっちゃう羊谷とかね。
悪党になりたかったエイジくんは、これからもいい人生歩みそうな気がします。