太古の森がここによみがえる… 「クロニクル千古の闇1」
- 作者: ミシェルペイヴァー,酒井駒子,さくまゆみこ
- 出版社/メーカー: 評論社
- 発売日: 2005/06/23
- メディア: 単行本
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ちょっと前に、評論社からパイロット版をもらって読んでから、だいぶ日が経っていますが、すぐにこの世界に溶け込んで読めました。
それだけ、この世界がどういうふうに成り立っているかしっかりと描かれているということなのでしょうか。
ファンタジーとしてどうこう、ということよりもそのことに思いがいたりました。
だれも、いまから6000年前の世界を知っている人はいません。作者は考古学を勉強して、本を読むだけでなく、実際に今でもその頃の森のようすが見られるという場所にいって体験してみたそうです。
当時は狩猟民族で、農業というものがない世界です。
食べ物はどういうふうになっているのか、衣服は?武器は?住居は?はたまたもっと思想的な面で、人の誕生や死についてはどんなふうに思っていたのだろうか?
ちょっと考えただけでも実にいろいろなことが疑問符として上ってくると思います。
作者はそういったことをよく考えて、うまく小説のなかに生かしていると思いました。
広大な森のなかにある草花や樹木、動物たち。
それらが作者の手によって、生き生きとよみがえってくる心地です。
また住人たちも、それぞれ動物の名前を冠した氏族(例:ワタリガラス族とかオオカミ族、イノシシ族のように)に分かれ、狩猟と採集によって生きています。氏族によって季節ごとに移動したり、または数日その場所にとどまってはすぐに移っていったり、と暮らしぶりはさまざま・・・
主人公のトラクが、父親を巨大なクマによって殺され失ってから、さすらう旅のなかで。
それらの自然があらわれてきます。
また一応、主人公はトラク、ということになっていますが、もうひとり(?)の主人公もお忘れなく〜と言いたい私。
オオカミのウルフがとっても素敵に描かれています。
とくにウルフ視点の部分が。トラクのことをどういうふうに思っているのかとか、いろいろわかっておもしろいです。
表紙の酒井さんのオオカミのイラストが雰囲気いいです。
ファンタジーとしては、その巨大なクマがあらわす闇と、それを影からあやつっていたらしい人物たち、それらが今後どのように絡んでくるのかが、気になるところです。
ここからはちょっと苦言。
トールキンの流れを継ぐファンタジーのひとつとして、光対闇の構図が見られますが、他にもファンタジー世界では他にも お約束…みたいな小道具も登場。三種の神器みたいな?
持ってると重たくて気力を絞られるような気になるところとか。あとハリポタとかでも御馴染みの(?)死人喰らいみたいなの…こちらはでは〈魂喰らい〉でしたが、そういうのも出てきて。
他のFTと類似する部分があるのは仕方ないことなのでしょうか。
文章はなめらかで、とても読みやすかったです。分量も適度。大人でも子どもも楽しめる内容になっていると思います。
6部作ということなので(な、長いなあ…)、今後に期待したいと思います。