きっとどこかにいる・・・となりのこども


となりのこども

となりのこども


岩瀬成子さんの本は以前、「金色の象」というのを読んだきりでした。今回、読んでみようと思ったのはたまたま偶然、図書館の返却棚にあったから。どうしようかなぁ〜と思いつつ…
でも手にとって正解でした!


全部で8編の短編が収められているのですが、そのひとつひとつを読むたびに、胸が痛くて痛くて、泣きたくなってしまうほどせつない気持ちをおぼえました。
こんな子どもどこかにいた、いいえそれどころか、私のなかにもかつてこんな子どもがいた・・・と、一作一作読むたびごとに思ってました。


本当は友達のことが好きなくせに、例えばそこに第三者の立場のものが紛れ込んでくると何かが掛け違ってきてしまう。
いつもは仲良く楽しく遊んでいるのに、突然、がらりと何かが違ってきてしまう、
ほんのちょっとしたことで、気分は変わり、さっきまで好きだったものが反対に嫌で嫌でどうしようもなくなってきてしまう。


そんな微妙な気持ちの変化、よくわかります。
私自身、何度もそういう思いをしてきたような気がします。
あとになって思い返してみると、どうしてあの時、そういう行動をとったのかわからない。
何が気に障って、そういうことをしてしまったのか!?
自分でも自分がわからない、そんな時期がありました。


子ども同士の関わりって、大人が思っているほど優しくも、美しくもないものなのかもしれません。
時に残酷になることもあれば、逆に心から人を愛する気持ちになることだってある。
要するに、ピュアなんですね。
純粋だからこそ、残酷にもなれば優しくもなれるって気がします。
むきだしの心・・・そこには妥協やごまかしなんてものは存在しないんです。
だからこそ、深く傷つきもするし、反対に愛情やあったかい気持ちを素直に受け取ることもできる。


岩瀬さんはそんな子どもの心をみごとに描き出してくれました。
人の心の奥にある、微妙な何か・・・それをとりだしてみせてくれている、そんな気がします。


作品の舞台は相互連鎖しており、どこかで人物や場所がリンクしています。
ひとつ話を読むたびに、あ、これ!と思います。
そういうことを発見する喜びもある…。
一個一個は別の話だけれども、どこかで底の部分がつながっている、そんな印象・・・。

いったいどことどこが重なりあっているんだろう?と思い、メモに書き出してみました。
ベースは最初の「緑色のカイ」に出てきた麻智と、夢のお告げをする理沙の二人にあるみたいですね。
この二人の友達や家族、その他ちょっとした知り合いなどが、少しずつ関わりを持っていて、そこからどんどん話がふくらんでいく。
知らずに大きなつながりのようなものが見えてくる。これはちょっと嬉しい発見でした。


現実の世界でも、こういうことが起こっているのかもしれませんね。
私たちが気づかないだけで。
神さまからははっきりと見えてるんですよ、きっと。

この場合、神さまは作者の岩瀬さん、になるわけですけどね。