面白さはかなりでした。「犬はどこだ」


犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)


この作家さんの本を読むのは初めてだったのですが、これはもう最初から楽しめました。
タイトルを初めに見たとき、「犬はどこだ」なんていったいどういうこと?と思いましたが、読んで納得でした。


訳あって職を変えて、犬捜しの事務所を開いたつもりだったのに、紹介した人の説明が足りなかったのか、次から次へと(といっても2件だけ)やってくる依頼は人捜しだったり、古文書の謎を追う仕事だったり。
「紺屋S&R」(サーチ&レスキュー)なんて微妙な名前だったせいか、探偵と間違えている。
依頼を引き受け、調査を続けるうち、ついつい愚痴がこぼれてくる。
犬を捜す依頼だったら・・・(こんな苦労はしなかったのに?)
と、なるほどタイトルにこめられたもの、よーくわかりました。
ぼやきたくなる紺屋さんの気持ちもわかる気がしますね。


最初はこの紺屋さんの一人称だったのに、途中から学生時代の後輩という人物が登場してきて、その彼の視点から見た話も加わって、それが交互に話が進んでいくのがとても面白かったです。


とくに、一方の調べてる依頼内容がだんだん・・・っていうところでは、ちょっと興奮しました。これこれ、こうやってつながっていくのね、って。
その後輩、半田平吉(ハンペー)の視点がまた面白くて。出てきたときはちょっと軽薄な感じだったのに、これが意外に使えるようで、どんどん話が進んでいくという感じ。
反対に紺屋部長の方は部屋にどかっとかまえて電話ばかりしてるイメージがあってちょっと地味めなくらいでした。


だけど、途中でハンペーがある事実がわかったのに、全く気づかなかったこと。読んでて、おいおいとツッコミたくなりました。
でもよく考えればそんなもんかも。何でもかんでもアンテナ立てて、ビビッとくるなんてことはそうないのかもしれません。


何かほんとにミステリーらしいミステリーという感じでした。
人捜しの依頼からはじまって、古文書の謎で地域の歴史の問題が、そしてインターネットに関わる問題など、何か盛りだくさんの内容でした。
とくに自分が日頃から使っているネット社会について、あらためて怖いところだったんだなぁ、と思いました。これからどんどんこういうことが出てくるのだったら、ちょっといやだなと…。まぁこれはフィクションですが、現実にも十分ありえることですね。気をつけねば〜


あとちょっと魅力的だなあと思ったのは、紺屋さんの妹。いまは可愛い喫茶店のマスターの奥さんでウェイトレスということになってるのに、その過去は・・・
後半で道路をかっ飛ばす彼女のすがた、かっこよかった。
いいキャラしてますね。お兄さんよりもよほどしっかりしてるし。


ラストにまたびっくりするようなことが起こりますが、私は素直に驚いて、それを楽しみました。
あやしげな人物もあまり気にすることなく流してたし。
すべてがひとつに集約されていくところ、ミステリーの醍醐味ですね。
ラストは目が離せず・・・ってところでした。


これはシリーズになってるんですね。新しいのがまた出たら、ぜひ読んでみたいです。