ファンタージエン、はてしのない物語


   はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)  
   はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)  
作者: ミヒャエル・エンデ, 上田真而子, 佐藤真理子, Michael Ende
出版社/メーカー: 岩波書店
発売日: 1982/06
メディア: 単行本


このあかがね色の本を、もったいないことに私はずっと積読していました。買ったのは映画「ネバーエンディング・ストーリー」を観たあとでしたが、この本が出て読みたいと思ったのは、映画化される前でした。
それ以前に「モモ」を読んでいて、その世界にすっかり魅了された私でしたから。
新刊として出たこの豪華本を咽喉から手が出そうなほど欲しかったのでした。
でもそれは叶わなかった。やはり貧乏な学生の身分では・・・なかなか思い切ることが出来なかったのでした。
結局、映画化されて実際に観たあとになってかなり迷いながらも、思い切って身銭を切って購入することにしました。


なのに、ずっと読めなかった・・・なぜか?
やはり読むのなら映画化される前に読みたかった、などと訳のわからない理由と、それとやはり映画のイメージが先行してあったためにぐずぐずしていて、買ったはいいもののなかなか読み出せませんでした。
結局、数ページ読んだだけで本を置いてしまいました。
(アトレーユの冒険が始まる前の、鬼火の下りくらいかな?)


時の経つのは本当に早いもので、積読したままいつしか本は埃をかぶっていき・・・
このたびドイツの作家、ラルフ・イーザウの「ファンタージエン 秘密の図書館」が発売されました。これが図書館に入っているのを知った私は、予約ボタンをぽちっと押してしまいました。
こうなったら、さあ大変! これを読むからには、絶対に「はてしない物語」は読まなければなりません。
未読の状態で手を出すなんてことは出来ませんでした。
なので、返却日がせまるなか私は借りられたイーザウの本より先に、自分の手持ちの本「はてしな物語」のページを開いたのでした。


そして、それきり本の扉を閉じることができなかった。もちろん一晩で一気読みしたわけじゃありません。毎日ちょっとずつですが、本の旅をつづけていった、そんな感じでした。
本心からいえば、バスチアンのように本を離さず、隠れ読んでみたいものでしたが、現実はそんな甘くはないですね。
結局、なんやかやと5日ほどかかりました。ゆっくりめのスピードで読んでいたもので…


前半部分はだいたいが映画で観たとおりの内容でした。
人の噂(?)で、映画は全く別物だと、そこから先が重要なんだという話は伝え聞いていましたので、やはりそうかなという感じでしたが。
私も目を離せなくなったのは、後半部分…バスチアンがアウリンの力によって望みを叶えるたびにひとつ自分の記憶を失っていくのだ、ということを知ってから、でした。
ここから先を読んだのなら、前半部分のただの冒険譚にすぎない話は色褪せてしまいます。もちろん子どもの目から見たら、楽しい心躍る冒険なのですが、大人の私からしたら、本当に魅入られたのはやはり失っていく記憶とともに旅していくバスチアンと、彼を影から見守っているアトレーユの話のほうなのでした。


そういう意味では、子どもに近い年代に読むよりもずっとよい読書経験だったのかもしれない。失っていく自分自身を、最後にバスチアンがとりもどしていく光景は、本当に絵のように美しく感動的で、自分もこうあれたら、と願うほどでした。
夢のように楽しくて、思ったとおりのことができてしまう別世界からの脱出。
本を楽しんで、そこから離れられなくなることの危険性を暗示しているようにも思えてなりません。本の世界は逃避の場所じゃない、必ず現実に帰ってくるものなのだ、ということをエンデは語りたかったのかもしれません。


もう、ひとつひとつの言葉がみな意味深くて、片っ端から引用してしまいたいくらいです。
そして、やはり“けれどもこれは別の物語、いつかまた、別のときにはなすことにしよう。”の言葉、いいですね。
それぞれの別の物語は、何百何千とあるのでしょうね。それをいちいち読んでみたくなってしまいます。つくづく、他界されてしまったエンデさん・・・惜しまれます。


アトレーユが託された、物語の結末も知りたかったことのひとつでした。
彼はどんな話を作り出したのだろう、と想像力が刺激されますね。

同じように、エンデの世界に魅了され、想像力を呼び覚まされた人たちがいました。
それがイーザウをはじめとする、ドイツの作家たちでした。
すでに6作品が書かれているんですね。その手始めがイーザウの「ファンタージエン」で。(余談ですが、私はずっとファンタージェンだとばかり思い込んでました。映画の影響で)
次の作家さんは全然知らない作家さん。
ターニャ・キンケルとかいう方の書いた「ファンタージエン 愚者の王」です。
それが来年1月に出るそうです。
既知の作家ではないので不安もありますが、読んでみたいという気持ちもちょっとあり・・・また図書館に頼ることになりそうです。


とりあえず、次はイーザウの本にいきます。