エイジ

エイジ

エイジ


重松さんの本これで3冊目ですが、ますます気に入りました。

エイジ、と聞くと、去年読んだ笹生陽子さんの「ぼくは悪党になりたい」のエイジが真っ先に浮かんできた私ですが、このエイジは中学2年生、思春期の入り口に立った難しい年齢です。
エイジはAgeからだったんですね。そう思うととても意味深い名付けです。
Age、時代・・・その時代を象徴している存在。


同じ年齢でも、それぞれの世代によって違ってくるでしょうが、
エイジの時代は、エイジの母がテレビで殺伐としたニュースを見聞きするたびに、口癖のようにいう言葉、めちゃくちゃな世のなかになっちゃったね、が象徴するような、そんな時代でした。
でもそんないやな世のなかでも、エイジたちは生きていかなくちゃならない。
いくら自然が豊富でいいところだからといって、ヒマラヤの奥地になんか住みたくないし、父や母の世代のことを羨ましいとも思わない、それが現代という時代に生きている、エイジたちなのだと。


クラスメイトが少年Aになってしまった、という衝撃的な事件を題材にしているにもかかわらず、この本は暗いとか、重たいということはあまり感じませんでした。
逆に、このことをつうじて、エイジが考えたこと、悩んだこと、いろんなことが伝わってきました。
友情のこと、家族のこと、学校のこと・・・
中学2年生という、エイジの“時”がくっきりとクローズアップされてくるようでした。


クラスメイトが逮捕された時から、ずっとエイジは悩みます。
自分はどうなのだろう?と。自分だったらどうしていたんだろう? 少年Aと自分とはどう違っていたんだろう。自分も同じ状況にいたら、同じように行動していたんだろうかと。

夜、自転車で走りながら、授業中、友人の背中を見つめながら、心のなかでエイジは警棒を突き出し、幻のナイフを突き立てます。


けれど、エイジには家族がいたんですね。自分を気遣い、愛してくれる家族が。
私はこのことが大きかった、と思います。
あの少年Aになってしまった彼の家族は、そこのところどうだったのかわかりませんが。
でも悪い家族なんてことはなかったと思いたい。
きっとどこにでもいるごくふつうの家族だったんでしょう。
何かちょっとしたことで、パズルのピースがひとつ欠けただけで、何かがかけちがってしまったのか?
正直よくわかりませんが・・・


そしてエイジのまわりにいる友人たちも・・・
ツカちゃん、タモっちゃん、岡野くん、その他クラスメイトたち・・・それぞれがそれぞれの事情で、悩みつつも懸命に生き、自己主張していた。
エイジもそのひとりであって。その時代を懸命に生きていたと思うんです。


そんな彼らのすがたを、あざやかに描き出してくれた。
「エイジ」は彼らの時代の物語。
殺伐とした、いやなニュースばかりの世の中だけれども。
彼らは、そこで闘いぬいていかなければならないんですね。


この本は児童書ではないんだと思いますが、ぜひ同じ世代の子どもたちにも読んでもらいたいです。
うちにはまだ中学生の子どもはおりませんが、うちの子たちがそういう歳になったら、できたら読んで欲しいな、と。心の隅っこで思っています。