この世のいやはてへ「朝びらき丸 東の海へ」

朝びらき丸 東の海へ (カラー版 ナルニア国物語 3)

朝びらき丸 東の海へ (カラー版 ナルニア国物語 3)

この巻はとりわけ好きな話でした。その昔、読んだときにも。今回、読んでずいぶん忘れてるところが多かったですが、最後の下りだけはおぼえていました。もちろん話の細かい筋などは忘れてしまっていたのですが、その雰囲気というか、神秘的な空気みたいなものは・・・

ナルニア世界の、この世のいやはて。そこで待っていたもののすがたを思うと、あらためてこの物語がキリストの愛を描いた“聖書”なのだということが実感できました。

以前、読んだときには冒険的なものばかりにとらわれて、見えてなかったんだと思いますが。
アスランの国へいった(と思われる)勇ましいネズミの騎士リーピチープのことを思うと、さらにその思いが強まっていくよう。
彼はいったい何を見て、どこへいったんでしょうね。
トールキン描くところの、楽園のような世界なのでしょうか。

もちろん、そうしたこと以外にも見るべきところがあります。先述したように、大冒険という意味でも、楽しいし、心惹きつけられるものがあります。
その冒険のほとんどをすっかり忘れていた私。一粒で二度楽しめた、そんなお得感でいっぱいでした。

どの話もいいですが、とくに印象的だったのは今回、初めてナルニアへいったユースチスの経験した冒険。
竜の洞窟でユースチスがそれに気づいた描写はなんともうまいですね。
ユースチフはこのときまでは、エドマンド以上に嫌な子どもだったのですが、このことがきっかけとなっていい方向へと向かっていったのです。そういうふうにさしむけたのは、言うまでもなくアスランの存在でした。
1巻でエドマンドがそうだったように。

ここでもそうですが、その他のどの場面でもアスランが出てきます。登場するっていうんじゃなくて、その時々でイメージだったり、絵のなかから語りかけるだけだったり、いろいろですが。

どこにもいないように見えて、ずっと見守られていたんですね。朝びらき丸がナルニアの岸辺を出航したときから。
そしてルーシー、エドマンド、ユースチフが、おばさんの寝室の絵のなかからナルニアに飛び込んできてからも・・・

この、絵に描かれた船のなかへ飛び込んでいく、という世界への入り方がとくべつ気に入っていました。
私が読んだ別のファンタジー本でも、模型の船をじっと見ていたら、いつのまにか現実にあるその船に乗っていて、別世界へ入り込んでいた、という話を読んだことがあります。
ひとつの方法ですね。衣装ダンスの扉をあけて・・・というほどわかりやすくはないけれど、より印象的です。