やっと5巻。「馬と少年 カラー版ナルニア国物語」

馬と少年 (カラー版 ナルニア国物語 5)

馬と少年 (カラー版 ナルニア国物語 5)

ナルニアもやっと5巻まできました。この話は、今までと少し違ってて、最初から最後までナルニアで進んでいく話。通常、現実の世界から異世界ナルニアにいってもどってくる話なのに対して、この話だけがずっと異世界で展開していく話なのです。

だから、そういう物語(現実世界からナルニアへ)になじんでいた方にとっては違和感があるのかもしれません。その点、私は全く大丈夫ですけど。

描かれている世界も、最初はナルニアじゃなくって、はるか南にあるカロールメンという国が舞台になっています。
漁師の息子シャスタが突然、自分が奴隷に売られることを知って、ナルニア出身のものいう馬ブレーとともに、ナルニアめざして飛び出していく話。

カロールメンという国は、アラビアふうなエキゾチックな感じ。同じくものいう馬フインとともにナルニアをめざしていた領主の娘アラビスが逃げ出すことになった理由、というのを考えてみれば、まことにアラビアふう?意に染まぬ結婚をおしつけられたせいです。
シャスタは奴隷の身分に売られるのだったけど、このアラビスも結局は同じこと。結婚という奴隷の身分です。アラビスの友だちで金持ちと結婚した女性なども登場したり、とアラビアふう社会の厳しさを彷彿とさせました。甘いように見えるけど、その底には厳しい現実というものがあるってふうで。友だちのラサラリーンが、本当は王さまを恐れていたんだってこと、よーくわかります。

なんやかんやと冒険の旅がつづいていきますが、そのなかで陰になり日向になりずっとよりそっていたのがアスランでした。どこにでもアスランの目はとどいている、というのでしょうか。
アスランは、聖書のキリストというのではなくて、もっと大きな存在のように思えてきます。自然のなかにやどっている力とか?何もかもを超越している存在とか。それが神、といってしまえばそこまでですが。
ナルニアを創り、すべてを見守っていった存在なんですもんね。

この時代は、ナルニアの全盛期。一の王となったピーターたちの時代です。
実際、途中でスーザン、エドマンド、ルーシィも登場します。どんなふうにかは、読んでのお楽しみ、ということで。
とくにエドマンドのセリフに「ライオンと魔女」での彼を思い出します。過去の自分をふりかえって見る部分とか、あって。1巻の内容がよみがえる感じです。
スーザンの性質もこの巻ではっきりしてきて、今後の行動を示唆しているようでした。

シャスタがナルニアに行きつくまでの話がとくに面白い、です。ナルニアについてしまって、あとは戦闘で…というあたりはちょっと飽きました。まぁセオリー通りです。

あとタイトルの「馬と少年」ですが、「少年と馬」ではないんですよね。英語のタイトルも「THE HORSE AND HIS BOY」となっています。「馬と彼の少年」という意味ですよね。
「少年と彼の馬」ではないんです。あくまでは主体が馬であるということで。まことにナルニアらしい表現です。

ちょっと関係ないけど、フィギュアの荒川選手が12歳の頃に書いた作文で、「スケートと私」というタイトルで書いていたというのを思い出しました。あれとニュアンスは同じよね、ってことで。連想したしだいです。