古典部シリーズ「クドリャフカの順番」

クドリャフカの順番―「十文字」事件

クドリャフカの順番―「十文字」事件

古典部シリーズ第三弾、です。前2作から振られていましたが、ついにやってきた!という感じでした。カンヤ祭… 神山高校文化祭です。

一読して、思わず懐かしい〜!と声がでそうになりました。このお祭り的な雰囲気。文化祭、学園祭の醍醐味でしょうね。神山高校の場合はそれがまたすごい内容だったんですが。文科系の部活が多いということで、しおりに書かれた出し物の内容がすごいんです。普通思い描くところの文化祭及び学園祭では、展示物と模擬店、合唱や演劇などの発表会的なもの、というイメージなんですが。このカンヤ祭はちょっと違う。○×クイズあり、お料理大会あり、ちょっと普通では考えられない。見るだけじゃなくて、自分も楽しむ参加系の演目が多いのが特徴でしょう。

その雰囲気だけでも面白いのですが、それ以上に注目すべきはやはり我らが古典部。間違って文集を多く注文してしまい、山のように積まれたそれを何とか部員の頑張りで完売へ向けていきたい、ということですが、それは全く前途多難で。部員それぞれの頑張りがそれぞれ面白かったです。とくに里志、千反田、摩耶花の3人で挑んだお料理大会の模様。じつは意外な特技を持っていたひとや、ある事情で遅れてきてあわやというところをまた意外な人に助けられ事なきを得たひとなどなど、楽しめました。
わらしべ長者(笑)ふふふっと笑ってしまいます。こういう細かいところ好きですね。

そんな雰囲気のなか、起こった「十文字」事件。各部活から、あるものが盗まれていく。それも十文字を気取って、アから順番に。
クリスティの作品と重ね合わせて考えられていて、面白かったです。「ABC事件」や「アクロイド殺し」その他エトセトラ。昔、読んだはずなのにすっかり内容を忘れています。奉太郎があげた「スタイルズ荘の怪事件」なんかタイトル聞けばわかるのに、内容に関しては霧のかなた。すっかり忘れていました。

犯人の意図がわかったときはちょっと悲しくなっちゃいましたけど。才能があるのにそれが全く眼中にない。使わないなんて、全くもってもったいない。それが咽喉からでるほど欲しくても、手に入れられない人が大半であるのに。あのひとはいったい、何を考えていたんでしょう。その人の人物像にはあまり触れていなかったので、よくわかりませんが、そのやりようを見ていると怒りすらおぼえるほどです。ああ、せざるを得なかった犯人さんの気持ちよくわかりますね。

鍵となった漫画「夕べには骸を」に対する漫画「ボディートーク」の作者に関しても、いろいろ思うところがありました。読むのを半分でやめてしまったという気持ち、ちょっとわかるような気がします。自分など到底およばないほどの出来、圧倒的な差をみせつけられ、それ以上見ることを拒否してしまったんですね。私だったら最後まで見てしまったかもしれないけれど、いい気分ではないでしょう。
自分が全否定されるような気持ちに陥ってしまったとしても、無理は無いような。一度でも創作の世界に触れたことのある人間ならば、わかる部分があるのかもしれません。
でもまあ、それすら凌駕してしまうような作品、自分など足もとにも及ばない、神さまのような作品だったら、いっそ気持ちがいいのかもしれませんけど。もしもそれが自分の友だちだったとしたら?…微妙なところです。

気になってた『氷菓』の文集の売り方、ナイスですね。納得しました。ラストも思わず、快哉を叫びたくなるような、いい終わり方でした。
これも早く文庫化されないかな?もし文庫になったら、絶対に買います。手許におきたい作品だと思いました。