「容疑者Xの献身」東野圭吾
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/08/25
- メディア: 単行本
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さてやっとこの作品を読むことができました。読後の感想は・・・こんなすごい作品だったとは!!でした。直木賞受賞も納得です。
とにかく、最初から最後までひきつけられ、貪るように読みました。すべてにおいて面白い、月並みな言葉ですがそれにつきます。
最初、タイトルを聞いたとき、どういう話なのか想像しましたが、そういうことだったのですね。ああ、そうだったのか、と静かな感動がひたひたと押し寄せてきます。
私はむかしから数学というものが大嫌い。最も苦手な教科でした。だから、なのかもしれない。
私は純粋に、この作品を通じて、数学のすごさというものを感じずにいられませんでした。あの人物が、ほとんど一瞬にしてあのトリックを考え付き、実行したこと。それは、彼の数学的思考あってのものだったでしょう。
私などには理解も及ばぬ世界です。私は自分が論理的だとは全く思わないし、どちらかというと支離滅裂で、感情的になってしまう方だと思っています。
だから、私は尊敬の思いを抱かずにいられなくなる。この小説に描かれたあるひとりの人物、石神の想いに。その理想に。
彼にとっては、数学とは最も美しい、偉大なものだったのでしょう。
けれど、彼はその大事な数学という学問すら自ら捨ててみせたのです。ある母娘への愛情のために。
実際、彼が手を下してしまったことは、人間的には冷酷かつ非情で、容認すべきことではないんでしょうけど。それでも、何故そういうことをしてしまったのか、という理由を考えてみると、否定してばかりはいられないような気もしてしまうのです。(甘いでしょうか)
ラストでは、思わず目頭が熱くなる感じでした。さすがに泣くまではいきませんでしたが、ちょっとした感動がありました。
湯川の推理もすごかったです。まさか、そんなことになってようとは。ほんとに非現実的世界で・・・ 物事のちょっとした盲点をついた考え方、ですね。
彼の友人への思いにも感動でした。この人がこんなふうに思ってしまう相手だったなんて!って感じで。
草薙刑事に、警察としてではなく、友人として聞いてくれ、と言う場面とか。
人間、湯川の内面にふれた感じで嬉しかったです。
これからあのふたりはどうなっていくんでしょう。もうどうにもならない、皮肉な結末になってしまって、非常に切ないのですが。
せめて、ふたりの心にいつか平安が訪れてくれることを祈りたい気持ちです。
面白かったので、またいつか、東野圭吾さんの本を読んでみたいと思います。