「彩雲国物語 紅梅は夜に香る」雪乃紗衣
- 作者: 雪乃紗衣,由羅カイリ
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/08/30
- メディア: 文庫
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シリーズ11冊目。最新作です。
やっとここまで来たって感じですね。よくぞここまで・・・とまでは思いませんけど、それに近い感慨はありました。
茶州からもどってきた秀麗は、謹慎処分をうけ、高位の官吏から一転、ヒラとして再出発することになったのでしたが。
この巻では、そんな秀麗が謹慎期間中に、また飛んだ騒動に巻き込まれ・・・というお話です。
頑張りすぎるほどに頑張ってしまう秀麗と対照的な人物が新登場します。
その名は蘇芳。今タイトルのねた元です。
秀麗と同じ身分。(一応、官吏の一人ではあるが、出仕はしてない)父親の家で、毎日ゴロゴロする日々。
ちょっと見ると、なんてだらしない!もっと頑張んなさい!とどやしつけたくなるような性格してるんですが。
彼がそうするのにも、理由があったようです。
蘇芳の過去など見ると、それもしかたなかったのかも、とも思えました。
私などはどちらかというと、秀麗側・・・ではなくて、この蘇芳側、ともいっていい心情になりがちなのですが。
そのせいか、一見だらしない蘇芳のことを、一方的に批判することはできませんでした。
一個人がどんなに頑張ったって、世のなか何にも変わりはしないんだ、という彼の主張。
確かに… 真理でもあるのかもしれない。
でも秀麗は、それをわかった上で、なおも何かを成し遂げたい、そういうふうにしている自分が好きなのだ、と開き直っています。
これは信念の違いですね。
両者とも、理解できるところはあります。
でも秀麗のいいところは、頑張るところ・・・ではなくて、自分の主張や信念を他人に押し付けないところです。
頑張れないでいるひとから見たら、頑張っている人からの言葉、“あなたも頑張んなさい!”というひとことくらい、嫌味に聞こえるものは無いですからね。
そこのところに、秀麗の優しさをみました。
そんな彼女が、劉輝に向かって放った言葉。うんうん、本音を言ってていいね、て思いました。人間、嫌な思いを溜めてちゃよくないもんね。
すべて吐き出して、また新たな道を進もう、って感じ。
しかし・・・ラストでまた気懸かりなこと出現。
あらあらあら〜!ってところです。
この巻に初登場した女性、歌梨だったら、怒りをこめてこう叫んでしまうことでしょう。
“まあまあまあ!なんてこと!!許せませんわっ!”とかね。
彼女はこの巻でいちばん印象的でした。男に対してキビシイところとか。秀麗を気に入ってしまうところとかね。今後も登場してくれるといいなあ。
続きは来月また新刊が出るそうなので、それほど間をおかずに読めそうです。