「西の善き魔女 外伝1 金の糸紡げば」荻原規子

本編はもう数年前(5年以上前?)に読んでいた私でしたが、何故か外伝についてはほったらかしでした。
ずっと読まないでいると、逆に読めなくなっちゃうものでして…

とはいえ、本プロの記事を拝見していたら読まれている方がいらしたので。ちょうどキリよくひとつのシリーズを読了したので・・・よい機会かと思い、積読山から引っ張り出しました。


本編は読みましたが、もうずっと前で。記憶がずいぶん飛んでしまっています。この外伝はそこへいくと、フィリエルの幼い頃の話なのですんなりと入れました。
おそらく初めての方も、ここからだったらまだ大丈夫なのかもしれません。
けれど、最後の「断章」に関しては、何のことやら全くわからないでしょうね。私もぼんやりとしか覚えてません(爆)
これは本当に本編を再読しないと。
幸い、文庫で買いなおしましたので、そちらで。


この外伝は、本編の雰囲気とまた違って、言うならば少女小説の『赤毛のアン』のノリでした。
だいたい「セラフィールドの少女」という副題自体そうだと思うんですが。
あとがきで、昔読んでいた本の数々につれもどされるようだったとか書かれていますが、さもありなん。


ルーンとフィリエル・・・ふたりの出会い、心の交流が、セラフィールドの美しい自然のなかで、印象的に描かれています。
セラフィールドという土地の風習とか。とくに冬至のミツバチの祭りがよかったです。緑の年男とか… 悪い子は連れて行ってしまうとか、まるで節分?って感じですが。冬至祭っていうと、やはり火のお祭りっていう印象ですよね。


セラフィールドの秋、冬、春、夏・・・。四つの季節が魅力的に描かれていました。
こういうところがまた少女小説のノリだと思ってしまうんですよね。
土地と切って離せないところとか。
アンがグリーンゲイブルズを愛するように、アヴォンリーを愛するように、マシュウとマリラを愛するように。
フィリエルもセラフィールドを愛し、ホーリーのおかみさん、だんなさんを愛していたのです。


そしてそこに、ルーンという異分子が入ってくる。いさかいが起きないわけがないんです。そこの葛藤がまたいいですね。
ルーンの数学に関する天才的才能によって、フィリエルはもやもやした思いを抱くのですが。博士の娘は自分なのに、とか。ルーンのせいで何もかも変わってしまったように感じて…。


で、後半、嫉妬のため?彼女が取った行動(夢で見ただけで、本当に実行してしまおう、いやしなくちゃならないんだと強迫観念にとらわれて?)。それによって、ルーンとふたり困った事態に陥りますが、その一件で逆にふたりの絆が深まり、イイ感じになりました。
最後の、お互いにお互いを補助しあおう、とするところ。よかったですね。
ルーンにとってのセラフィールドはフィリエルなんだ、というところ。しずかな感動ありますね。


私が持っているのは古い方のノベルスなので、挿絵とのギャップは、ちょっと…!でした。ちょっとコミカルすぎるかな?と思いました。
もういちど文庫版で出直そうと思います。