「王狼たちの戦旗」ジョージ・R・R・マーティン

王狼たちの戦旗 (上)  (氷と炎の歌 2)

王狼たちの戦旗 (上) (氷と炎の歌 2)

王狼たちの戦旗 (下) (氷と炎の歌 2)

王狼たちの戦旗 (下) (氷と炎の歌 2)

第二部は思いのほか時間がかかってしまいました。とくに下巻がかかった・・・年末で慌しかったせいと風邪をひいて不調だったせいだと思いますが。
ですが、この巻では、あまりに悲惨でむごいことが次々と起こっていたので、そのせいで進みがのろかったのかもしれません。
話は相変わらず、おもしろく先が気になるのですが。


これが戦争ってもんなのかもしれないですね。これは架空の歴史小説ですが、現実の中世なんかではこういうことが多々起こっていたのかもしれない。
戦争で犠牲になって亡くなってしまった人びと。敵の手にかかれば、その遺体はさらしものになって城の前に立ち並ぶ。その遺体を烏がついばみ、生前とは見分けもつかない骨と化してしまう。なんて悲惨な、戦争の実態。

ファンタジーという括りに入っていながら、ここに描かれたものは現実の世界と相容れないものではなかった、と。
それだけに多くの読者の心を打つものがあるのでしょうが。

けど、中盤で起こったあることがショックで。そのことがずっとひっかかっていて、読むのが遅くなったほどでした。
初めから彼の運命は過酷だったけれど、何もこんなところで、と。あまりに惨い運命に唖然としてしまった。半ば信じられない気持ちでした。

それがラストで救われました!ああそうだったんだ、と。ホッとしました。


今回、視点に初登場の人びとについても、いろいろ思うところがありました。そのひとりシオンについては、ちょっと後味悪い人物でしたね。何か空回りしてるようで。彼の視点部分はちょっと不快でした。姉のアジャにやりこめられていい気味!でした!

あと前巻では名のみだったスタニンス王。やっと出てきたけど、彼は視点人物じゃあないんだよね。
そのわけが解説部分でわかりました。

この視点人物になってるのは、弱者の立場の人に限られてたんですね。ちょっと気づかなかったけど、ほんとそうなんですよね。
スターク家の子どもたちも、視点人物になってる人とそうじゃない人がいる。長男のロブは勝者の立場の人間だから、出てこないんだ。へぇ〜!と目からウロコでした。

それだけに、この物語の構造がおもしろいものになってるのかもしれないなあと思いました。いわば社会的弱者の立場の人間から見た歴史になってるわけですから。

普通、歴史小説といったら勝者の、強い者からみた歴史になってると思うので。この話は逆なわけですから。おもしろいなあ、と思うのです。

ファンタジーとしてももちろん注目度はありますね。
デーナリス(ダニー)が出てくる部分では、まるで妖艶なダークファンタジーを想起してしまいそうなところがある。あの三頭のドラゴンが今後どうなっていくのか大いに気になるところです。

あとスタンニスが新しく導入した宗教。光の主ってのも気になりますね。光といってるが、あれはどう見ても闇ですし。
レーニスのあのシーンではそそけ立ちました。え?って思ってしまった。赤い女とかいうの、これからどう出てくるのか?楽しみです。

アリアの出てくるシーンも動きがあっておもしろいですね。
これからも活躍してくれると嬉しいなあ。
ティリオンもあんなことになってしまって。気の毒だけど燐火という悪魔の火を使ってしまったせいでしょうか。
前巻では、好感を抱いていた私でしたが、だんだんあやしくなってきました。結構、やるときはやるみたいな人物でした。


もちろん「壁」の向こうのロード・スノウこと私生児のジョンのパートも忘れてはなりません。野生人というのが出てきて・・・彼の運命もこれからどうなってしまうのか?見逃せないところでしょう。


次の巻はちょっと時間をおいて、年明けに読み始めたいと思います。3巻一度に読みたいので。