「もしも願いがかなうなら」アン・マキャフリー

もしも願いがかなうなら (創元推理文庫)

もしも願いがかなうなら (創元推理文庫)

これも同じマキャフリーのロマンティック・ファンタジーものです。ただし決して、甘いラブロマンスなどではありません。
どちらかっていうと、心がほんのりあったかくなる、ハートフルストーリーと言っていいものなのかもしれませんね。
小さな村の領主エアスリー卿の妻レディ・タラリー。彼女はかしこい助言や癒しの力を持っている。村人たちは次々、彼女を頼ってやってくるので、夜昼休む暇がないほどだった。
そんなある日、彼らの公国に近隣の国が攻め込んできて・・・兵を集め、自ら出兵していくエアスリー卿。
留守を守るは妻のレディ・タラリー。
彼女の口癖は、「わたしに何ができるか考えましょう」。
その言葉どおりのことを実行する。
戦火にさらされる村の人びとを守って、領主館に集め、ない物を補ってともに手をとりあって暮らしていこうとする、その勇気と知恵。
レディだけでなく、その子どもたちも彼女に見習って、なんとか事態をのりきろうと奮闘する。その姿がとても好感持てる感じです。

そんななか、跡継ぎの兄とふたごの妹が16歳の誕生日を迎えることになり・・・・戦争で物がない時期なのに、なんとかやりくりして、ここでも知恵を発揮しようとする母タラリーでした。

兄には馬を、妹には水晶を…誕生日のお祝いの品に贈ろうとするのですが。水晶は女の赤ん坊が生まれたときにすでに選んで買ってありました。代々、女の子には水晶を贈る風習だったらしく。
ですが、馬の方は戦争で良い馬がいなくなってしまって、村に残った歳若い男の子たちや老人などはロバやラバ、酷い時には山羊などで乗用に代用しなければならない始末。到底、馬は得られません。

そこで一計を案じたレディ・タラリー。彼女がどんなことをしたか?については、彼女に与えられたある能力によるものだったのでした。


頼りになる男の人たちがみないなくなってしまって、弱い立場の女性や子ども、老人たちが手をとりあって協力して、生きていこうとする姿勢にとても好感をもてました。

ふつうは描かれない、こういう話っていうのは貴重ですね。
希望が心に灯される、そんな感じです。

いかにもマキャフリーらしいお話でした。水晶の扱いとかもね、『クリスタル・シンガー』思い出しました。

またこんな話、読んでみたいですね。
『だれも猫には気づかない』『天より授かりしもの』とあわせて三編。ごいっしょにどうぞ。オススメします。