「まほろ駅前多田便利軒」三浦しをん

まほろ駅前多田便利軒

やっとこの本を読んだ私。しかし、ちょっと読む時期を逸してしまったようです。
少なくとも、『風が強く吹いている』より先に読むべきでした。
おかげで、確かに面白かったものの、正直これが直木賞なの？という疑問が・・・
まあ、しをんさんが賞をおとりになった事実は嬉しいですけど。

ペットの世話、塾の送り迎え代行、納屋の整理、恋人のふり？などと雑多な仕事を請け負う、多田便利軒という、便利屋さんの話でした。
それだけだったら、何も起こりそうにないけれど、ここに行天というとんでもない人物が居候になって・・・それから事件が次々起こるのでした。

なかには、ちょっと怖い事件もありましたが、そんななかでもつねに変わらないのがこの行天という人物。
ちょっとないキャラでしたね。
学生の頃、ひとことも口をきいたことがなかった、とか、とんだ顛末で子どもを持つことになったこと、とか。
ちょっと変わった人物ではあるけれど、一本筋がとおっていて、それが気持ちよいくらい。

なかでもよかったエピソードはチワワの話。預かった犬の行き先を勝手に決めてしまった行天に多田は怒るけれど、でも結局それが正しい選択だったんですよね。この話はちょっとほわっときました。

そんなことやら、いろんなエピソードをとおして、だんだん多田の行天に対する思いが変わってくる。その過程が読んでいて、気持ちよかったです。

最初と最後の章が対照的で、感慨深かった。たった一年間の話だったけど、その間に確実に変わっていったものがあったんですね。
なんだかんだいろんなことがあったけど、結局幸福ってのはいちばん身近にあったんだ、と。
多田の行天に対する気持ちの変化が心に残りました。

あとまほろ市、っていうのは架空の名前ですけど、町田市を舞台にしているんですってね。
そう思って読むと、へぇと思うことがありますね。