「禁じられた楽園」

禁じられた楽園

禁じられた楽園

この話はのっけから興味をひかれ、どんどん詠み進めました。

大学生、平口捷(さとし)は、同級生で世界的な天才美術家烏山響一から招待を受けた。聖地・熊野の大自然の中に作られた巨大な"野外美術館”へと―――。

幻想ホラー超大作、というからいったいどんなのがくるんだろう、と思っていましたが、案の定やられました。
恐怖の館へようこそ、という雰囲気でしたね。
物理的恐怖もありましたが、心理的恐怖もあり、なんともはや怖かったです。

怖いもの見たさは人のさが?
捷(さとし)と律子が、響一の招きを受けて導かれるように入った恐怖のテーマパーク。
戻りたくても戻れない、先へ進むしかないっていうの。
背中がぞくぞくくるこの恐怖感はたまりません。


聖地・熊野とありますが、熊野を舞台にして書かれたとかいう、現実感のようなものは皆無で、恩田ワールドそのもの。
美術館というよりも、まさにテーマパーク的なノリなのかもしれない。いろんなタイプの恐怖を体験できてお得です(笑)・・・ほんと会員制のテーマパークとか?なりそうで怖い。


先が全く見えないという、ものすごい緊張感と切れ目なく続く恐怖のオンパレードで、すごくいい調子にきたのですが。
最後の土壇場で、これまで築いてきたものを根本から打ち崩してしまうようなことが起こりました。


それ自体については何も言いません。もしも、初めから話がそういうふうに着地するものと考えて作られていたものならば。少女小説的だとか、アニメ的だとかいう意見が見られましたが、私はそういうノリも必ずしも悪いものとは思えません。


もう、最後の最後で思っても見なかった人物が登場してきて。ええ〜!!そんなことあり!?と目を疑ってしまいましたが。
ラストはちょっとそっけないほどでしたが、それはそれでいいのかもしれません。
すべて無いことになってしまったのですが…


私は悪魔的印象の烏山響一が結構、お気に入りだったのですが。なに考えてるかわかんない、ダークな魅力。
それが… まるで御伽噺のようにあれよあれよの間に。
闇に染まった魂が、愛の力によって救済され、光のなかへ・・・とかいうファンタジーものを思い出してしまいました。(それは好きな作品だったけれども…)


なお、装丁は単行本のほうが好きでした。文庫も出たけど、なんだか『クラバート』みたい。まさかそっち目指して作ったんじゃぁないでしょうけど。