「文学刑事サーズデイ・ネクスト 3 上下 だれがゴドーを殺したの?」ジャスパー・フォード


文学刑事サーズデイ・ネクスト〈3〉だれがゴドーを殺したの?〈上〉

文学刑事サーズデイ・ネクスト〈3〉だれがゴドーを殺したの?〈上〉

文学刑事サーズデイ・ネクスト〈3〉だれがゴドーを殺したの?〈下〉

文学刑事サーズデイ・ネクスト〈3〉だれがゴドーを殺したの?〈下〉

文学刑事サーズデイ・ネクストの3巻目です。
これは図書館で予約して借りました。町立にはなくて県立図書館の蔵書を回してもらいました。

前作とかちょっとうろ覚えになってたのですが、文庫は1巻までしかまだ出てないし、読み直しのためにわざわざ借りるのも面倒なのであまり気にせず読み始めました。
したら、その面白いことといったら!
もう冒頭を読んだだけで、この世界に直行してしまいました。
前作の終わりで、サーズデイは妊娠中ゆっくりと過ごすために未刊の小説『カヴァーシャム・ハイツ』のなかに入り、身を隠すことになりました。


そこでキャラクター交換システムを利用して、主人公のメアリーの代わりになって、休暇を過ごしながら、混絶されてしまった夫のランデンを取り戻す計画を練ることにしたのです。その合間に、メアリーの役を演じることになったというわけ。

といってもまるまる休みというわけでない。休んでいるあいだ、サーズデイはジュリスフィクションの保安要員、ミス・ハヴィシャム(チャールズ・ディケンズ著『大いなる遺産』の登場人物)の配下について、仕事を手伝うことになります。


ジュリスフィクションというのが、どんなところで何をするのかやっとわかってきました。
現実世界で本が読まれると、そのときどきで、本のなかの世界では登場人物たちがそれぞれの役を演じている、というふう。メインプロット(表舞台のようなものですね)でストーリーが進行しているあいだ他の場所では、登場人物たちは一息ついていたり、勝手なことをしゃべっています。


お話のプロットラインに沿って、登場人物たちは筋をゆがめることなくそれぞれの役を勤め上げます。
勝手なセリフや行動は許されません。フィクション違反すると、永久追放されたり、文字に分解されてテキスト海(シー)で廃棄されたり、といろいろ大変そうです。

ジュリスフィクションとは、いわばそれらの役者たち(そう言ってよければ)がちゃんと役をこなし、物語が正しく進行していっているか監視したり、新しく生まれる物語を受け入れたり…?そんな仕事らしい。


そのシステムというのがあって、現行のものはBOOK.V8.3、というまるでどこかで聞いたような名前のシステム。
ところが、ブックワールドでは、それに代わる新システムというのを導入することになります。これがウルトラワードTMという代物です。これの機能というのがなんともすごい。近未来的、というか。
ありていに言って、読書を画期的なものに変えようとするものでした。


一例をあげれば、このシステムによると、読者にはいろんなメリットがあるとか。まず会話の話者を明示することなく、読者は容易にだれの言葉か判断できるようになる。
それと長いあいだ読みかけで放置していた本を、次に読もうとするとき筋を忘れてしまったりして苦労するものですが、そういう読者のために粗筋を教えてくれる、プロット要約プラスTM。
他にもページが光って、暗がりでも本が読めたり、音楽が鳴ったり、匂いを感じ取れたり、と、これではまるで本を読んでいるとは思えないような内容。

難しい言葉が嫌いな人は、簡単な言葉に直して読むことができるし、その逆も同じ。
読む速度も、どういうわけだかわからないけど、4倍のスピードで読むことができるとか。


何だかこう書いていると、よいことずくめのようですが… 落とし穴はあったわけで。


サーズデイにはこのこと以外にも、もうあっちこっちで大騒動。役をふられる前の、白紙状態のジェネリックが二体、サーズデイの住んでいる飛行艇にいっしょに住むことになったり。
彼女の記憶のなかにいるエイオーニス(『ジェーン・エアを探せ!』で殺された兄アシュロン・ヘイディーズの妹)によって、混絶されたランデンの記憶を失いかけたり。


また相変わらず、脚注電話(フットノーターフォン)は大活躍。脚注電話で、『アンナ・カレーニナ』の噂話を聞けたり、まあにぎやかなことこの上ない。

または、綴りまひがい(ミススペリング)を起こすウィルスが出てきて、それによって殺人事件が起こったり、本のなかに生息していて、文法(グラマー)を食べる怪物?グラマサイトと対決したり、サーズデイは一応妊婦さんのはずなのに、いったいこんなんで無事出産を迎えられるのかしらねえ?と危惧してしまう始末。
読者にとっては面白いことこの上ないですが。


他に面白かったこと。

本で時々起こる誤植は読者にとってはただの間違いにすぎないが、ブックワールドではそれは大変なことらしい。
上記のウィルスで間違った単語に化けて、意味すらも違ったものになってしまったものとか。
それを退治するために派遣されてくる、ダールワース夫人軍団がすごいおかしかった!!
ウィルスを閉じ込めるよう、回りに積み重なる英語辞書の防壁!! すごいの一言です。


他にもちょっとしたことでも大爆笑だったことが多々。
「〜〜だったのだった」や「〜〜ことのこと」問題。
もう笑いました。確かにやりがちなミスですね。


まだまだ語りつくせない感じなのですが、この面白さをわかってもらうためには、ぜひ本書をお読みください、としかいようがない。
このシリーズ未読のかたも、ぜひぜひお読みください!と声を大にして言いたいです。

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トントン > このシリーズすごく気になってるんです。図書館でも続々と入荷しているようだし、そろそろ読んでみたいと思ってます。この巻からでも大丈夫そうですね・・・大爆笑したいです^^ (2007/04/01 09:05)
北原杏子 > トントンさん、シリーズ物なので、出来たら1巻目から読んだほうがいいと思いますよ。でないと何が何やら?って感じになっちゃうと思うので。もちろん1巻から大爆笑できますから〜。参戦お待ちしております〜♪ (2007/04/01 20:07)