「読書の腕前」岡崎武志

読書の腕前 (光文社新書)

読書の腕前 (光文社新書)

この岡崎武志という人のことは今まで全然、知りもしませんでした。それがどうして、この本を手にとったかというと、とある方が読んでいらしたから、というのが最初のきっかけでした。その方の言葉から、これは何か面白いらしいとアンテナがさっとひらめいたけれど、その時すぐに読もうとたちまちのうちに決意したかというとそうでもなくって、なんとなく頭の片隅にひっかかっていた、というのが本当のところです。

それがあるとき、ふらっと立ち寄った書店で、ふっとこの本のことを思いだし探してみることにしたのでした。どこから出ている本かということも覚えていなかったので、うろ覚えに新書のヘンをウロウロしたりして。なかなか見つからなくて、ケータイで書名検索などかけてみたら、なんだこれじゃん、とけっこう近くにあった本を無事ゲットすることに成功したのでした。

帯の表側に「読書しない人生は、書〜もない人生」とあったのが、またピンときました。これだ!っていうひらめきが。
そして裏側に返してみると、そこにもひとこと。
「本を読む時間がない、と言う人は多いが、ウソだね。その気になれば、ちょっとした時間のすき間を利用して、いくらでも読めるものなのである。」
これを読んだとき、私は心のなかで叫んでいました! そう、その通りなのだ!と。

すぐさま買って帰り、読み始めました。

そしたら、これは真剣に本が好きな人が書いた本だということが即座にわかりました。著者の本に対する愛情の深さがびんびん伝わってくるのです。

とくに私にとって福音、というか、天からの一声みたいに感じたのは、「ツン読」も読書のうちなのである、ということでした。

例として。

Aという人は、本はたくさん買うが、読む暇がなくって、もっぱらツン読になってます〜 と少々、申し訳なさげに言う人。

対して、

Bという人は、自分には絶対にツン読というのはない、本は読み終わってからでないと次のを買うことはないし、また読み終わった本は処分して手元に残らないようにしている、とちょっとえらそうな口ぶりで言う人。

さあ、この二人のうち、どちらが読書家といえるのでしょうか、という著者の問いかけが載っていましたが。
私は気分としては絶対にAです。こういうことを言うと、また家人に怒られるのでこっそりとここでだけ言いますが。

そして著者はさらに、「ツン読」も悪くない、「ツン読」にはちゃんと「読む」という文字が入っているのだから、たとえすぐに読まれなくても、その本が部屋の本棚においてあるだけで、その本は少しずつ「読まれている」のだ、というのです。

ただ置いておくだけでもダメで、時々その本を触ってみたり、じっと背表紙を眺めてみたり、時にはパラパラとページをめくって匂いをかぎ、あまつさえ頬ずりして感触を愉しむ???… まあ、ここまでするのはちょっと抵抗はあるかもしれませんが、それでも気持ちはよくわかります。

この、いつか読まれる本として、つねに自分の本棚で待機している本、というのはすごく重要な役割を担っているように思えます。
ただ置いておくのではなく、つねにあそこにはあの本がある、と頭の片隅に残っているというのが。
そういう本はいつか必要になったときに、ぱっとひらめいて、役目を果たすのだ、というのです。

岡崎氏は、そのためには買ってきた本をそのまま本棚に納めてしまうということはせずに、購入した本を手で触ってその本の感触を指に記憶させ、しばらく自分の身近(自分の部屋のパソコン周りや本を読むソファ、テーブル、ベッドの上等)においておくそうです。そういう手続きを踏んだ本は、自分でも絶対に忘れないし、いつか読む本としてつねに意識のなかに存在している、のだと。

だから、「ツン読」を恐れることはない、どんどん積んどけ、と。

これを読んだとき、私の脳裏に天啓がひらめきました!などといったら大げさですが、それと近いことが起きたように思います。

私もよく本を買います。そして買いすぎて、読むのがおっつかず、いつしかその本を買ったことすら忘れはて、もういちど同じ本を買ってしまう、という間違いをおかしてしまうことがあります。いわゆるダブリ買いです。

先日も似たようなことが起こりまして。大いに、自分の記憶力のなさをうらんだものでした。

ですが、この岡崎氏の言葉を読んだ私は、自分のどこが悪かったのかよくわかりました。これからはこのことを本を買うときの参考にしたいです。

それから、岡崎氏は本を買う手段ですが、ほぼ間違いなく自分で書店に赴き、購入されているそうです。ネット書店で手軽に買うことはないと仰られています。
ついつい便利なのでネット書店も利用しがちですが、これも一理あるかもしれないなあと思いました。
やはり本を選ぶのは、書店で実物を試しながらじっくり決めるのが本当でしょうね。それをつい手軽だからとか、ポイント狙いでとか、姑息な思惑でいっぱいになって本を買ってしまうのはあまりほめられたことではないかもしれませんね。

まあ100%は無理だと思うので、せめて初めての作家やジャンルの本を買うときなどは、書店でしばらく悩んでみるのもよいかもしれません。

いずれにせよ、本を買ってからは同じこと。上記のような手続きをしっかりと踏んでから、待機本の仲間に入ってもらうとか、忘れないようにする手段はあるでしょう。


本のガイドとしても、この本は優れています。文学作品が大半なので、私はほとんど知らない本ばかりでしたが、こんな本を読んだら面白いかも、と思わせられるものがたくさんありました。さらにツン読率が高まりそうな、そんな危険性はありますが。


これからも、自分にとってめぐりあえて本当によかった!と思える本との出会いを、期待したいと思います。

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青子 > 北原杏子さん、こんばんは。積読OKなんですね。私もいっぱいあります。図書館派のはずなのに、なぜか知らないうちに増えてるんです。<時々その本を触ってみたり、じっと背表紙を眺めてみたり、時にはパラパラとページをめくって匂いをかぎ、あまつさえ頬ずりして感触を愉しむ>なんて、もうほぼ病気みたいですね。でも、微笑ましくも思えます。そこまで惚れ込まれたら本だって本望でしょう。 (2007/04/29 20:06)
ケイ > こんばんは〜本を愛する著者の本ですね☆私はたいした読書家ではありませんが、買った本を処分することは出来ません。。
結構考えて買うので。でも考えないことも多いかなあ。ほしくなるとだめですよね。もう。私も読んでない本あります。
ぱらぱらっとめくったりしています。図書館派なので、借りた本がいつもそばにあります。ないとだめかも。それぞれに思いがありますよね。私が思うにやっぱり本好きというのは、手元において愛着を持つということかなと思います。文庫が出来そうなほどの蔵書。すてきです。夢ですが。。そばにないと落ち着きませんよね。処分。これはともかく頭痛いですがあんまり出来ません。でも好きな本があるって幸せですよね。それでは〜 (2007/04/29 22:50)
ときわ姫 > 図書館から借りた本は籠に、今買わないともう手に入らないかもしれないと思って買ったライトノベルはこの棚、読みかけの本はここの棚、読み終わったらちゃんと本棚に、分けて入れるところを作っているはずなのに何でソファーの上、テーブルの上、さらに床に直接本があるのでしょう・・・・。
私が時々困るのが、図書館で借りて読んで良かったから買ったという本。たいていブック・オフなどで見つけて買うのですが、また見つけたとき買ったかどうか分からなくなってダブり買いすることがあるのです。持ってる本は膨大すぎてリストも作れないし、どうしたら防げるのでしょうか。 (2007/04/30 09:23)
トントン > 私は積読本はあまり多くないと思うんですが、図書館で借りて読んでから気に入って買う本(主に文庫)とレシピ本、絵本はどうしても増えていってしまいます。この本も気になる!チェックしておきます。 (2007/04/30 14:57)
北原杏子 > 青子さん、積読OKと聞いて、いいことを聞いたと思ってしまった私でした(笑)。ほぼ病気・・・う・・・んちょっと書きすぎちゃったかなぁ。そのまんま書かれてあったんでなくて、私のなかでこういうふうに受け取ってしまったということで・・・少なくとも頬ずりするとは書かれてなかったと思う(汗)岡崎さんの名誉のために書いておきます。 (2007/05/01 23:12)
北原杏子 > ケイさん、お久しぶりです。私もめったに本は処分することがないですね。あ、でも岡崎さんはいらないなと思った本はどんどん処分するそうです。自分にとって価値ある本のみとっておくということですね。ケイさんもきっと吟味して買われるのでしょうね。ほんとに好きな本に囲まれてるってのは幸せなことです。 (2007/05/01 23:15)
北原杏子 > ときわ姫さん、蔵書リストがあってそれを検索して探し出すことができれば理想なんですけどね。まるで図書館並み!
で、ちょっとご紹介ですが…
私は最近、「趣味は読書。」というSNSに入ってそこで蔵書入力しています。自分の本棚が作れるところです。操作も簡単、ISBNを入れるだけでばしばし登録できるんで、面白くって次から次へと入れてます。私は3000冊を越してまだまだ先が遠い、という状況です。携帯で蔵書チェックもできるので、ダブリ買いにも大いに役立ちそうです。 (2007/05/01 23:20)
北原杏子 > トントンさん、本は増えますよねぇ。これは本好きでいる限り、一生解決されないかなぁと思ってます。この本、読書好きな人ならおすすめですよ。紹介した内容以外にもいっぱいあります。ブ攻略法とかね(岡崎さんはブックオフのことを略してブと呼んでるんですって!) (2007/05/01 23:23)