「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」桜庭一樹

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

ラノベ小説のほうの桜庭一樹本です。まず、タイトルがいっぺんで印象に残りますよね。それと甘ったるい、イラスト。まさに砂糖菓子みたいに、べたべたしてます。
正直いって、私はこのイラストは好きじゃありません。中に挿絵もあるので、読むときには挟みこみのハガキで絵のページを隠しながら読んだくらいです。
この絵がなかったら、もっと集中して読めたのに、って感じです。


話はわりと(といったら失礼ですが)、面白かったです。最初、転校生としてきた、海野藻屑というキャラになじめないものを感じてましたが。なにせ、海の藻屑、ですもんね。インパクト強すぎです。
全く、なんでこんな名前つけたんだ!と親の考えを疑いますよね。

で、その藻屑ちゃんの親、父親はとんでもない男だったんですね。その酷さと異常さがわかってくると、最初反発を感じていた藻屑に対する考えが変わってきました。印象がガラリと変わりますね。

ペットボトルの水をこぼしながら飲んでた彼女。自分は人魚だから、といって足をひきずって痛そうに歩いていた彼女。足についていた痣を海洋汚染のせいなんだと言い張る彼女。花名島となぎさと三人で映画館にいったとき、花名島が話しかけても無視してるようだった彼女。彼女を見たバスの運転手の言葉・・・

真実がわかってみると、その重さにうなだれるばかり。
そしてラスト。あまりといえばあまりな結末です。もちろんそれは冒頭部分にすでに書かれていたので、そうなるんだろうとは思ったけれど。できるならそうなって欲しくなかったですよね。

ショックをうける周囲のものたち。とくになぎさ。砂糖菓子の弾丸を撃ちつづけていた彼女が、その事件をきっかけに、もう二度と撃てなくなったこと。服装や髪型も何となく男の子っぽい感じだった彼女が変わっていく。
子どもの世界から脱皮し、砂糖でできた弾丸では戦えないことを知ってしまった、なぎさの変容の物語。
いっけん軽い本と思われがちかもしれないけれど、ここにはもっともっと重たいものがある、と思います。

最近、文庫から単行本へ出直したそうですが、落ち着いた単行本の装丁でこの話を読むのもまた、いいかもしれません。