「時の旅人クレア 1、2、3」ダイアナ・ガバルドン

時の旅人クレア〈1〉―アウトランダー〈1〉 (ヴィレッジブックス)

時の旅人クレア〈1〉―アウトランダー〈1〉 (ヴィレッジブックス)

時の旅人クレア〈2〉―アウトランダー〈2〉 (ヴィレッジブックス)

時の旅人クレア〈2〉―アウトランダー〈2〉 (ヴィレッジブックス)

時の旅人クレア〈3〉―アウトランダー(3) (ヴィレッジブックス)

時の旅人クレア〈3〉―アウトランダー(3) (ヴィレッジブックス)


これは前々から気にはなっていたけど、ロマンス小説ということでいまいち食指が動かなかったシリーズ。
ですが、すみません。少々侮っていたかもしれません。

これはアウトランダーシリーズの、まだ最初の数巻にすぎません。
アウトランダーというのは、要するに“よそもの”のこと。

「第二次大戦終結直後、従軍看護婦だったクレアは夫とともにスコットランドのハイランド地方で休暇を過ごしていた。ある日、地元の人間に教えられてストーン・サークルを訪れた彼女は、突如異様な感覚に襲われ、意識が混濁する。気がつくと古めかしい衣装の戦士たちが眼前で戦いを繰り広げていた。」

という、タイムスリップものです。クレアは18世紀のスコットランドにタイムスリップしていたのでした。
タイムスリップものって、好きで読んでて楽しいものだけれど、この本もまた例外ではなく。最初からひきこまれていました。


とくに最初の1巻なんて、どこがロマンスもの?と思うほど、重厚な感じで、18世紀のスコットランドのお城の生活の様子とか、真に迫っていて、そこの部分読むだけでも十分、価値があると思いました。
日本ではなかなかあの時代の雰囲気を出した翻訳作品はないそうです。
自然描写のほうも美しく、スコットランドの緑や光が目に浮かぶようでした。


以前、あらすじをちょっと見たときは私はちょっと勘違いしていました。クレアの夫と同じ容貌の男がいた、ということから、また違った路線を想像してしまってました。
その予想は全く覆されて、いい意味での裏切り、よかったです。


2巻に入るとさすがにちょっとそういうシーンは入りますが。クレアが恋をする過程が丁寧に描かれていて、こういうジャンルだからしょうがない、お約束だから入れるのだといった、ご都合主義的なものは感じませんでした。あくまでもストーリーの流れに沿って説得力のある話になってます。


時代的な背景も、クレアの行動を通して浮き彫りとなって描かれており、スコットランドの歴史なんて全く知らないことばかりでしたが、へえそうなのか、と思うことが多々で勉強になりました。
衣装に関してもそうで、スコットランドの民族衣装といえば、タータンチェックのキルトですが、マント代わりに使えたり、毛布や敷物代わりになったりと、いろいろ使い勝手がよさそうですね。いささか下品な話ですが、この時代のスコットランドには下着という概念がなかったとか。キルトの下には・・・って、今から思うとうそぉ!って感じですね。(涼しすぎないの?とかお下品な私すみません)

あとスポーランという単語が度々でてくるので、どういうものかと思っていたら、革製のポシェットみたいなものだそうです。他にも衣装関係では興味深い記述がありました。


そして3巻。
これは打って変わって、ほんとにヘビーでした。重たいなんてもんじゃない。
どうしてこれがロマンス小説なの?と思えるほど。
例のクレアの夫に似た人物というのは、夫の祖先にあたる人だったのですが、性格は全くの正反対で、それがクレアをまた悩ませます。
夫と同じ顔で、全く違う印象。でも時に、彼が一瞬、笑ったときなどに夫を感じさせる部分があって・・・戸惑うクレアでしたが、2巻である決別をすることになる彼女は、もうこの3巻ではもう変わってきてしまっています。


最後、とんでもない事態が巻き起こって、クレアの大事にしている人の身に危機が迫るのですが、そこのシーンがまた悲しく辛くて。このまま彼は・・・なんてことも考えたけど、最後には・・・。


最後の最後にクレアがした決断は、あれはいったいどういったものだったんでしょう。
あんな重篤な状態だった人が、と驚かされます。
心の問題なのかな。そう言い切るにはちょっと深刻な状態だったと思うんだけれども。


と、ここの部分に関しては、疑問を感じないでもなかったのですが。でも本心をいえば、よかったと感じてる私がいました。
悲しい結末は見たくない、甘ちゃんの私でした。


まだまだシリーズは続いていて、現在は12巻あるそうです。
もうこうなったら、最後までぜひ読み通してみたいです。
このレーベルから出たので、そういうものだと思われて、この作品が読まれないのだとしたら、残念なことだといわざるを得ません。
私は、たんなるロマンスだけでなく、ファンタジーとしても歴史小説としても十分読める作品だと思ったのですが。
やはり世の評価は厳しいものなのでしょうか。
あまり大きな声で褒めている人は見かけないような気もいたしました。もったいないと思うけどな。