「晩夏に捧ぐ 正風堂書店事件メモ(出張編)」大崎梢

正風堂書店事件メモの第二弾。今回は出張編ということで、正風堂を離れ、信州の高原へ赴き、幽霊がでるといういわくつきの書店、宇津木書店通称「まるう堂」を訪れた杏子と多絵。
前作がどっちかといえば、書店を舞台にした軽いミステリだったのに対し、こちらはより重厚な、横溝正史ばりの本格ミステリだとか。
そのせいでか、ちょっと私はノリきれなかった気がしました。あくまでも、書店を舞台にしたライトミステリを期待してたので。
あれ?とちょっと肩透かしでした。


でも話は十分、面白かった。地方書店の現状などもうかがい知れたし。何より書店を愛する宇津木書店の店主、その人物設定が良かったし。お店の隅々まで熟知しているような店主の書店への愛情の深さが感じられ、何ともよかったですね。


過去に起こった事件で登場する、小松秋郎もまた自分の書いた小説が、まるう堂(宇津木書店)の店頭に並ぶことを夢見た本好き、作家志望の青年でした。

事件があった朝、老作家の死体のそばでぼうっとしていた秋郎。私はぜったい何かある!と思ってました。
彼が犯人のわけはないよね、って感じでした。

だから結末は、そうだったのか!と思いました。
小説を書くことを身上としている人物が起こした行動だったのだなあ、と。


多絵の推理も堂にいったものでした。
ラストの、犯人である人物の起こした行動がまた怖ろしいものですね。
やはり人を殺しておいて心の平安はないということでしょう。


多絵の推理をまえにたじたじとなっている杏子さんですが、彼女の本への愛、書店への献身は本物ですね。
このシリーズを読む前は、杏子が探偵役だとばかり思い込んでいましたが、実際は多絵で。そこが意外といえば意外でしたけども。

書店での杏子さんの頑張りをまた見てみたいです。
続編もぜひ読んでみたいと思います。