「ずっとお城で暮らしてる」シャーリィ・ジャクスン
- 作者: シャーリィジャクスン,Shirley Jackson,市田泉
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/08/25
- メディア: 文庫
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「すべての善人に読まれるべき、本の形をした怪物である――桜庭一樹」
帯に、銘打たれたこの文句に、なになに…?と思わない人はおそらくないかと思われます。私自身がそうでした。
さらに引き続いて、
「皆が死んだ このお城で、あたしたちはとっても幸せ。」
という文句。
これで止めが打たれた、という感じです。
いったいどんな話なんだろう、と読み始めました。
お城というからには、ちょっと童話のような、フンンタジーのような世界かしら、とも思う向きもあるかもしれません。
お城で暮らしてる、優雅な貴族のお嬢様の話かしら?と…
そんな先入観をもう、バリバリと打ち砕く衝撃が本書にはありました。
この驚きを味わってほしいから、あえてストーリーはここには書きません。
実際に、お読みになっていろいろ感じてほしいのです。
まさに、「本の形をした怪物」であり、明確にこうと、何か形にならぬもの…しいて言えば邪悪さ?
そんなものを描きだした傑作です。
「メリキャット お茶でもいかがと コニー姉さん
とんでもない 毒入りでしょうと メリキャット」
読後は、あなたもこの歌を口ずさまずにいられなくなる、のかもしれません。(どんなメロディがついているのかは、想像するしかないですが。)
それほどの厚さがないうえ、とても読みやすい文章なのでするっと読んでしまいますが。
ちょっとずつ何かが掛け違っていって、気づいたときには自分も怪物になりはてていた、っていう感じといえばいいのかな。もう、それは状況次第で、どんな怪物にもなってしまいかねない、人間の怖さ(弱さ)としかいいようがないですね。
どんな怖がらせのホラーですら、とうてい太刀打ちできないほどの恐怖であるだろうと思います。
残された少女たちは今でもお城で暮らしているんでしょうか。表紙の絵に描かれているように、まるで忘れさられた妖精たちのようにも思えてしまいます。
人びとの、彼女らに対する心理もそれに近いような気がしました。たたりがないよう、奉っておくというふうな感じが。
とてもおもしろい作家だと思ったので、またいつか何か読んでみたいと思います。