「ツクツク図書館」紺野キリフキ

ツクツク図書館 (ダ・ヴィンチブックス)

ツクツク図書館 (ダ・ヴィンチブックス)


初めて読んだ作家さんの本でした。図書館の新着本コーナーで目に付いて借りてきました。

冒頭のところ読んでまず興味を持ちました。

「ここ図書館ですか?」と、たずねてきた女。
女が手に持ってたのは「職員募集」の貼り紙。
その仕事内容とは、ただ図書館の本を読むだけ、という仕事。

うわーん、いいなぁ!! これ読んでそう思っちゃった人、たくさんいるでしょう。

ただ本を読んでるだけでお金もらえるなんて!
なんて美味しい(美味しすぎる)話なんでしょう。

その図書館には名前はない。看板にもただ「図書館」と書かれてるだけ。外装は洋館という雰囲気で、ちょっと見には図書館には見えない。
筑津区だから?ツクツク図書館と呼ぶ人もいるという。

そんなちょっと奇妙な図書館に集まった職員はみな変わった人ばかり。暇そうにプラプラしてる人が多いとか。
雇われた女は必要以上に着ぶくれしてるし、他にも語学屋や運び屋、戻し屋なる職員もいる。


なぁーんかものすっごくシュールな世界。ストーリーもとくにこれ、といったものがない。ただこの奇妙な図書館のことがたんたんと描かれていくだけ。

一見、何の意味もないような、そんなわけのわからなさで満ち満ちているようにも思えるが、ふとしたところにくくっとほくそ笑んでしまうような、おかしさがある。


雇われたくせに、「わたしは働きませんよ」と堂々と館長に宣言する女も相当おかしい。
今日は何冊読みましたか?と聞かれ、堂々とゼロですと答える女。

他の利用者も限りなくゼロに近いほど、来館しない。当然、貸し出しもゼロ。何年も何年も・・・
なんでそんなに利用者が少ないのかっていえば、それはこの図書館はつまらない本ばかり集めた図書館だったから。

毎月、運び屋なる人物が己の嗅覚によってつまらない本を収集して図書館に運び込んでいるという。
だから女も図書館の本を読まないし、利用者も訪れない。(図書館の本じゃない、自分のもってるおもしろい本を時々持ち込んでは、押入れにこもって読んでることはある)


最初はちょっとかったるいな、と思って・・・図書館に集まる毛色の変わった人びとの話を読んでたけれど、そのうちククっと喉の奥で笑ってる自分に気づいた。
なんかよくわかんないけど、おもしろい。つまんないようで、でもおもしろい。


女が家で買ってる猫ギィの話がとくに気に入った私。
女に飼われる前の飼い主に言葉を習って、本を読むこととを覚えた猫…。その読み方がすごくかわいいのだ。


猫には指がないからページをふつうにめくれない。
でも、足の裏をちょこっとなめて濡れた足をページの墨にぺたんとおす。くっついたページをえいっと、横にふる。ページがめくれて、猫は読書を再開する。
そして夜じゅう本を読み続け(読んでるのは女が図書館から借りてきたつまらない本)、眠くてたまらなくなってきたら、最後にぺたんとうどんの汁かなんかで足跡をつける。
ここまで読みました、という猫専用のしおり。

本は汚れてしまうかもしれないけれど、でもなんかかわいいじゃないですか!
猫の足跡のしおり。いいなあ・・・!!


とまあ、こんなふうに楽しい本でした。