「蛇行する川のほとり3」恩田陸★★★★

蛇行する川のほとり (中公文庫)

蛇行する川のほとり (中公文庫)

3巻。今日、午前中に読了しました。
本当は子どもの育児学級があったのに、その子どもが折りよく(?)寝てしまったこともあって、ついつい読み耽ってしまいました。おおこれも恩田陸の魅力のせいだわ、と勝手なことを言ってます(^^;

さて内容です。(微妙に?ネタばれあります、未読の方はご注意を)
2巻の終わりを見て驚愕し、次はどんなことになるのだろうか?と、どきどきしながら読んでました。
でも何だか、とってもきれいにまとまっていましたね。
それはそれでとても綺麗な終わり方だし、そうだったのか…と謎が解け、すっきりはしましたが。


でもこの話がはじまった時点では、香澄はもっと幻想的で、現実からかけ離れた存在のように見えていたのですが…
あまり詳しくは書かれていませんでしたが、両親との関係において傷ついてしまった子ども、だったのですね。
なぁんだ〜と思ってしまいました。
もっと小悪魔的なものも感じていたのですが、違いましたね(^^;


2巻でのあの緊迫した会話のシーン(ワインを飲みながらの昔話)などを見ていると、これはどういうことかしら、
といろいろ想像できて楽しかったのですが。
結局、真相はすっきりすっぱり解明されてしまって…。
何でも真相を知ってしまうと、魅力が半減してしまう、ということなのでしょうか。


とはいえ、音楽堂でのシーンなどは印象的でした。
芳野に香澄が乗り移った(?)ところなど…
仮面をうまく使ってあって…効果的でした。
でも唐突に、香澄のいまの親が出てきたのでちょっとあれ?って感じでした。
この二人に関しては、最後までよくわからないままでした。
香澄たちに比して、大人である彼らに関しては最後まで影のような存在としてしか書かれてなくって。
香澄のお父さんと、亡くなったお母さんとの関係とか、お父さんに対する香澄の愛情とか、ただ言葉で説明されるだけだったので、あまりピンときませんでした。


結局、この作品で書きたかったのは、芳野が言っていた、「正しい少女」のすがただったんでしょうか…。
そんな生き生きと光り輝く少女たちに対比して、大人たちは影のように印象の薄いものでしかなかった。
哀しいけれど、それが現実というものなのでしょうね。

毬子も芳野もこの事件が終わってからは、そうした「少女」をなくしてしまって、大人へと成長していってしまうのかもしれませんが、そういう永遠の少女たちには無くなって欲しくないですね。
たとえ彼女たちからそれが無くなったとしても、まただれかのなかにそれが受け継がれていくように?
それは、少女のままで去ってしまった香澄のなかにこそ在るものなのかもしれませんが…


恩田作品にはいつも思うことですが、ミステリーという狭いジャンルにとらわれない、より大きな世界を感じます。
そういうところが、人を惹きつける魅力なのでしょうね。
ただの謎解きのミステリーだったとしたら、こんなにものめりこめない、と思います。
これからも読み続けたい作家のひとりです。



*本プロ レスより*

まゆ > 軸になるのは香澄で、彼女と語り手との距離感が、そのまま物語の密度になっているような気がします。だから、いちばん遠い真魚子が語る3巻は、どうしてもあっさりしてしまうのかも。これを読んで、私が恩田陸に求めているのは、単なるミステリではないのだということに気づきました。 (2003/09/17 00:38)
あさこ > 1,2巻が大好きだったので、正直3巻は拍子抜けな印象でした。ただ、やっぱり恩田さんは微妙な年代の少女を描かせたらウマイですよね!ものすごく魅力的でした。 (2003/09/17 12:45)
マリ > 北原杏子さんはじめまして。わたしも同じく香澄の両親のところでは「あれ?」と思いました。特にお父さんは、香澄と血が繋がっているのにかかわらず、極端に無個性な人でしたね。恩田さんの描く少女たちは相変わらず魅力的でした。 (2003/09/17 19:04)
北原杏子 > まゆさん、ホントにそうですね、3巻の印象がうすいのは。第三者である真魚子にすべてを見とどけてもらいたい、というのもその必要性がぴんときませんでした。
あさこさん、それが恩田さんの最大の魅力ですね。今後もそういう作品をいっぱい読んでいきたいです。
マリさん、はじめまして。あんなにも魅力的に描かれていた香澄の両親なのに、あまりに何も書かれていなかったので、あれ?と思いました。やっぱり意図してそうしているんでしょうかねぇ。 (2003/09/17 23:51)
あつし > あさこさんに同感です。恩田さんは少女を描くのが非常にうまい。特に今回のような言うならば「少女喪失」のようなものを書かせたら右に出るものはいません。それでいて時々ぞっとするくらい冷めた世界の見方をするんです。いつまでも心を捉えて放さないものがあります。 (2004/02/07 15:56)
北原杏子 > あつしさん、本当にそうですね。少女を描くのがうまい恩田さん。私も大好きです(^_^) (2004/02/08 23:13)