「鏡のなかの迷宮 水の女王」カイ・マイヤー★★★

鏡のなかの迷宮〈1〉水の女王

鏡のなかの迷宮〈1〉水の女王

人魚が泳ぎ、羽根のある石ライオンが飛びまわる架空の国、水の都ヴェネチア
だがそのまわりでは、30年以上もの長いあいだエジプト軍が都を包囲している。唯一の守り手だったのは、水の女王。都を流れる運河、ラグーナそのものだった女王は、都を統括する貴族院議員の裏切りに会い、危機的状況に陥ってしまう。
それを助け、担い手となって都をともに脱出するはめになったのが、主人公メルレ。鏡工房に弟子入りしたばかりの少女。彼女の行く手に待ち受けるものは? 光の王とは!?


…と、三部作ということではじまったこのシリーズ、この巻ではほんの序の部分が描かれています。
架空の国といいますが、ヴェネチアを舞台にしたお話ははじめて読んだ気がします。それだけに新鮮味はありましたが。
鏡工房というのもおもしろいです。
メルレといっしょに入ってきたジュニパという盲目の少女が目のなかに鏡をいれてもらって、それで見えるようになる、というのがまた斬新な感じ。
メルレの持っている水の鏡(表面が水のように波立っていてそのなかに手などを入れることができる。魔法の鏡?)というのも気になるアイテムです。
ジュニパがこの鏡を覗き込んだシーンで、ちょっと気になることひとつ。普段はおだやかで優しい雰囲気のジュニパが鏡のなかを覗き込んだときだけ反応が違った気がして…
今後、どのような展開になるのか楽しみです。
メルレの両親のこととか、あれこれ想像しては楽しんでいました。やはり水の女王と何か関係が?とか。


全体的にスピーディーな展開で、本屋で見かけた帯には読み出したら止まらない、みたいなことが書いてあったと思うけど。(私は図書館で借りました)
確かにすぐ読める内容だとは思いますが、ひょっとして私だけか?とは思うのですが、なぜか?途中でちょっと飽きてしまったことがあったんです。結局全部読み通しましたけど。


30年以上ものあいだ街を包囲している、エジプト軍というのがピンとこなかったこともあります。お祭りの描写などを見ている限りではあまり切迫した印象を受けなかったものですから… 包囲されている街、という印象がうすかった。
いや水の女王とやらが守っているせい、なのかもしれませんが(^^;


それと地獄の口が開いてそこから…というシーンも。正直、何なんだ?と思いました。途中で、地獄の入り口が開いたのをヴェネチアの人々は忘れてしまった、とかいう文があったと思うのですが、そこはあまり気にせず読み飛ばしてしまって。実際、このシーンを読んでああ、あれ…と思い出したくらいでした(^^ゞ


最後のところにでてくる、「いにしえの反逆者」というのがキャラクター的にはよかったような気がします。
今後、メルレとはいい相棒になれそうな予感がします。本人(?)もそう言ってましたしね(^^)
ヴェネチアのほかの世界がどうなっているのかも、これから明らかになっていくんでしょう。
それもあわせて続編が楽しみではあります。



*本のプロ レス*

たばぞう > ダークファンタジー系だそうですね。地獄の力を借りて・・・という思いがけない(?)展開が以後楽しみです。ヴェネチアは思い入れのある街なのですが、ヴェネチアのこの世のものとは思えない街の存在感を上手く利用していて、私は結構満足しました。 (2003/09/30 12:47)
ときわ姫 > 私も読みました。ちょっと飽きてしまったというの、わかります。私は、ちょっと物足りないと感じたんですが、たぶん同じ感じかな。出だしのヴェネチアの風景とか、鏡やライオンなどの小道具に目をくらまされてすごく面白そうと読み始め、ふと気がつくと結構ありきたりなストーリーじゃん?となってしまったんです。ありきたりなストーリーでも、現実に立ち返ることなく読み終わるものもありますから、気がついてしまったというところが、筆力に欠けるところがあるのかもと思います。
ところで押売りのオススメをしたいんですが。北原杏子さんは、結構好みが私と合うみたいなので、最近私がUPした「ミラードリームス」を読んで見ませんか?「鏡の中の迷宮」の後続けて読んで、こっちの方が面白いと思ったものですから。 (2003/09/30 14:09)
北原杏子 > たばぞうさんヴェネチアには(当然ながら)行ったこともない私ですが、車の代わりにボートで移動するという、水路に囲まれた街の風情などは何となく憧れですね〜。たばぞうさんはもしかして行かれたことがあるんですか? この世のものとは思えない…とか。実際に行ったことがないと抱けない感想ですものね。
ときわ姫さん、そうですよね。面白くなりそうな素材はあるのに、あまりノレない気がしていました。実際の原作はどうかわかりませんが(原書でなんて読む気もない!)いわば翻訳というベールを通してその世界を見てるわけで…筆力といっても本当のところはどうなのかわからないんですが…そんなのどうでもよくなってしまうほど面白い!!と思える作品が本物じゃないのかな、とは思いますが。
お薦めいただいた「ミラードリーミス」も面白そうな内容ですね。じつはときわ姫さんの「ミラードリームス」感想を先に読んで「鏡のなかの迷宮」を読んでいたら、メルレとゼラフィンがもうひとつのヴェネチアからやってくる存在について話しているシーンでふとそれを思い出していました。何だか似ているような…?って(^^) 今度、図書館に予約入れてみます。 (2003/09/30 22:57)