「ダークホルムの闇の君」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ★★★★

ダークホルムの闇の君 (創元推理文庫)

ダークホルムの闇の君 (創元推理文庫)

私の好きなダイアナ・ウィン・ジョーンズのファンタジー作品です。

魔法世界ダークホルムに、別の世界…つまりは魔法のない世界(私たちの住んでいる世界、つまりハリポタでいえばマグル世界ですね)に、事業家のチェズニー氏なる人物がやってきて、魔物のバックアップによる契約を結んで以来40年。
この世界はチェズニー氏の言うがままに巨大テーマパーク化し、この観光旅行を維持するために諸国の財政は危機に瀕し、次々に訪れる観光客の望む戦を行うため町も土地も荒廃状態。
大いなる危機に瀕したこの世界を救う方法は?
神殿のお告げで新しい闇の君と先導魔術師に選ばれたのは、魔術師ダークとその息子ブレイドだった。
ダークは魔術師といえど、家族を愛し、自らの作り出した動物たちに愛情をそそぐ人物だったため観光会のやりかたに強い反発を感じるが、否応なしにチェズニー氏の注文に応じた状況を何とかして構築しようとする。
彼に協力するのはその家族。
妻マーラに、息子ブレイドに娘のショーナ、そしてダーク夫妻の遺伝子を受け継ぐグリフィンの子どもたち5羽。
さて騒動の顛末は!?


といった内容でした。最初はどうもこの観光会というもののしくみがピンとこず、また登場人物が多いため名前をさらうことに注意がいってしまって、この世界に入り込むのがちょっと遅くなった、という気がします。


とはいえ、さすがDWJ作品。読み応えは十分ありました。
何より奇抜、というか突飛だったのは、魔術師ダークが自ら作った5羽のグリフィンたちの存在でした。
しかもただのペットとかではなく、自分の子どもたちとしてわけ隔てなく育ててきた、という点。
まさに一男一女五グリフィン、という大家族ですね。
それどころか、他の動物たち。翼があり口をきく馬、ビジンにキレイ。翼のある豚たちなど…ダークが愛情をそそぐ対象は様々です。ダークの人となりがよくわかる、というものです。
彼ら兄弟姉妹が協力して事にあたっていくようすは、読んでいるととても心がほぐれます。
人間とグリフィンという隔てなどとっぱらった愛情のありかた。いいですねえ。
彼らが昔から嬉しいときなどに踊るという(?)グリフィン踊りというのが目にうかぶようです。とても楽しい家族なのでしょう。


世界まるごとを使った観光会というのにも、驚かされました。スケール大きい… 何組もの巡礼たち(観光客たちのことをそう呼んでいます)がたどるコースのそれぞれ。
ブレイドたちが懸命に間に合わせようと奮闘するようすをとても興味深く読みました。


ラストのどんでん返しにもあっと言わせられます。思ってもいなかった結末でした。といってもアンハッピーエンドじゃなくて、その反対。めでたしめでたしで終わったのが良かったですね。
またところどころにダイアナ・ウィン・ジョーンズ特有の(?)ユーモア感覚が散りばめられており、その点でも楽しめます。ビジンにキレイというネーミング。そしてドワーフの名前にガラドリエル
そしてエルフの王子タリサンが予言の成就に相好をくずして大笑いしている図など。本来は美しいものの最たるもののエルフの王子が、です。そのギャップに笑えます。


いわゆるファンタジーとしては異色作かもしれませんが、読み応えはバッチリ。満足できました。
魔術師など、多彩な登場人物たちも○。
私的には龍のウロコがけっこうツボにはまりました(^^ゞ


続編も出ています。「グリフィンの年」次に読む予定でいます。


*本のプロ レス*

ときわ姫 > わーい、私もダイアナ・ウィン・ジョーンズのファンなんです。これは面白かったですよね。王子タリサンにはほんとに笑ってしまいます。「グリフィンの年」図書館に予約中です。 (2003/10/17 07:17)
すもも > おひさしぶりです。すももです。過日は、はじめましてのご挨拶もしないで書き込みをいたしまして、失礼いたしました。杏子さんの読書日記、とても楽しみに読ませていただいてます。DWJは、大好きな作家さんのお一人ですが、この作品はなせか最初の方でつまずいてしまって、読めていませんでした。おかげさまで、読む意欲が俄然出てきました。ありがとうございます。杏子さん、ときわ姫さん、これからも、どうぞよろしく。 (2003/10/17 09:24)
北原杏子 > ときわ姫さん、本プロではあまりジョーンズの作品に関しては感想をアップされている方はあまりいないようで。その中で、ときわ姫さんが続々とアップされているのを読ませていただいておりました。本当にDWJの本は、ひとつとして同じようなものがない感じですよね。
私の笑いのツボはこのタリサン王子とドワーフガラドリエルでした(^^ゞ ただいま「グリフィンの年」読書中です〜♪
すももさん、いえいえそんなことはないですよ〜。逆に私などの日記を読んでいただけて嬉しい限りです、どうもありがとうございます♪ 「ダークホルム」は最初、唐突に話がはじまっているせいか?私もちょっと冒頭からかなりのページにいくまでさくさくとページが進む感じがあまりありませんでした。でも大丈夫、すぐに面白くなりますよ。実際に観光会がはじまって、ブレイドやキットたちが活躍しだす頃には… ということで楽しんで読んでくださいね♪
そうそう、この話とは関係ありませんが、「アトリアの女王」の後編を図書館から借りてこられました。やっと!
「グリフィンの年」が終わったら、早速読むつもりです(^^) (2003/10/18 00:08)