「グリフィンの年」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ★★★★


グリフィンの年 (創元推理文庫)

グリフィンの年 (創元推理文庫)

「ダークホルムの闇の君」続編です。

チェズニー氏の観光旅行が廃止されて八年。ケリーダ総長は世界改革のために総長の座を辞し、荒野へ猫三匹とともに移り住み、年かさの魔術師たちは次々引退していった。
だが、ケリーダ総長から運営を引き継いだ若手の魔術師たちは何一つ円滑にことを進めることができなかった。
赤字はかさむ一方で、職員の給料と食費を払うのでせいいっぱい。屋根の修理代すら出せないという体たらく。
学費値上げで入学者は激減してしまい、そのため苦肉の策に、全学生の父母宛てに、寄付をつのることになったのだが…

これが原因でとんでもない事態が次々に起こってしまう。新入生のひとりに刺客がさしむけられたり、学食に海賊が乱入する、外套掛けにつきまとわれることになってしまった女子学生などなど…しまいには中庭にグリフィンがいっぱいに!
大学挙げての、前代未聞の大騒動に発展していってしまうのだ。

新入生として大学に入学してきた、魔術師ダークの娘・グリフィンのエルダ。北の王国ルテリアの皇太子ルーキン。
南の皇帝の妹クラウディア。東の首長国出身のフェリム。素性不明の美人のボート部員オルガ。ドワーフラスキン
彼ら6人が大学の危機に大活躍する、魔法世界のキャンパスライフ!


といったストーリーもさることながら、登場する6人の学生たちが生き生きと描かれており、それだけでページが進む感じでした。
とくにダークの娘(前作ではまだ子供子供してた)エルダが可愛らしくて。コーコランという、月面船を作って月へ行きたいという夢を見ている魔術師がいるのですが、エルダが最初、彼のことを熊のぬいぐるみみたいだといって一方的に恋こがれ(というほどでもないかもしれないけど?)、姿を目にするだけでいちいちぼおっとし、騒ぎまくって…。
それがとあることが原因でコーコランに幻滅を感じてしまうと、そんなふうに感じてしまった自分に対して罪悪感を感じてしまったりとか。
グリフィンというよりも、全く人間そのもの、思春期の娘の反応という感じ。
他の学生たちもエルダをちゃんと人間として、同じ仲間として扱っているところが、いいですねえ!
作者ダイアナさんのあたたかい目線を感じますね。


その他、ルーキンとオルガの思わずほろりのエピソードもあり、青春だねえ、キャンパスライフだねえ、と楽しいです。
後半部分に入ると、他にも続々とカップルが。
グリフィン、人間それぞれに… 思わず微笑みがもれてしまいます。


騒動が騒動を生む、というタイプのお話で、「空中の城」(「ハウルの動く城」)の一巻目や、「わたしが幽霊だった時」などを彷彿とさせます。(ハチャメチャなところが!)
何より、クラウディアと力が同化してしまい、あとをくっつきまわしていた外套掛けが、ソフィにつきまとっていたあのかかしを思い起こさせるところなどは、言うまでもありますまい!


ただ後半に出てくるブレイドとキットたちが行っていたという西の大陸って?と思ってしまいました。
前作だけ読んでいるとそんな説明はなかったと思うんだけどなあ。あっちの大陸でのグリフィンたちのこととか、向こうの国とあったという戦争のこととか、もっと詳しく知りたかった気がします。
ブレイドとグリフィンのフリューリィーのそれぞれの恋のゆくえも知りたいし。
この続編とかあってもおかしくないと思うんですが。
どうなんでしょうねえ?


ラスト近くで登場した(それまでもいることはいたけど)あるお方の正体にびっくり!!でした。


*本のプロ レスより*

ときわ姫 > 北原杏子さんの感想を読んで、図書館から来るのがすごく楽しみになりました。早くこないかな。 (2003/10/23 14:15)
北原杏子 > それはそれは面白かったですよ♪ ときわ姫さんも早く読めるとよいですね。読んだら感想教えてください。 (2003/10/23 14:40)