「美亜へ贈る真珠」梶尾真治★★★★
美亜へ贈る真珠―梶尾真治短篇傑作選 ロマンチック篇 (ハヤカワ文庫JA)
- 作者: 梶尾真治
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2003/07
- メディア: 文庫
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私はこの作者のものを読んだのは初めてでした。名前は知っていても、あまり手にとって読もうという気にならなかったのでした。
今回、手に取ったのは、私の好きな水樹和佳子がこの短編集の表紙絵を描いていたからです。
帯の惹き句「時空を超えた恋人たちの出会いと別れを描く愛と哀しみの作品集」というのにひかれたということもあったかもしれない。
ともあれ、この本を読めてとてもよかったです。
もっと早く読めばよかった…と後悔したほどです。
7編の短編が入っていて、みな女性の名前がタイトルに冠せられています。
テーマは解説にも書かれていた『愛と時間』。
月並みですが、不変の愛…っていうところでしょうか。
違う時間を生きる恋人たちの心情を痛切に描いた、表題作の「美亜に贈る真珠」、よかったです。
24時間(一日)が機内では一秒にしか感じられないという『航時機』。
その中にいる彼を愛する美亜の一生が、彼にとっては数時間で終わってしまったというのがなんともまた切ない話でした。
他の短編もそれぞれ味わいがあって甲乙つけがたいです。
「詩帆が去る夏」は、亡くなった恋人のクローンを作って自分の娘と育てながらも、昔の恋人の記憶が戻って欲しいと願ってしまう男のエゴを感じてしまって、どうにも堪らなかったですね。ラストの落ちがまたいい。
「梨湖という虚像」、辺境の観測星で亡くなった男を想いつづける女心…とてつもなく深いです。
梨湖が最後に下した決断は…うーん、あれでいいのか?と正直思いましたけど。理想郷なのでしょうね。
「玲子の箱宇宙」、箱のなかにある宇宙というのが面白かったです。私もあんなのが欲しいな〜 ちょっと怖いけど。
どこにでもあるような夫婦のすれ違い、なんて話がこれがあるだけで全く違った内容に。おもしろいっ!
「時尼に関する覚え書」、「ジェニーの肖像」の逆バージョン? 遡時人、というのが面白かったです。時間の流れを逆に生きている、ってちょっと頭がこんがらがっちゃいそうだけど、まさにSF!て感じで。
同じく「ジェニーの肖像」を下敷きにしている、恩田陸の「ライオンハート」を思い出したりしてました。話は全然違うけど。
パラレルワールドの存在を描いてもいる「江里の“時”の時」はタイムトラベルもの。パラドックスが原因で違う世界の存在を知り、その世界の女性に恋してしまう男。
ラストはこんな幸せな結末もあったんだよ、ということがわかってまだ救われた思いでした。
「“ヒト”はかつて尼那を……」、ワルッィエン人に征服され、滅んでしまったヒトという存在に興味をもち、救ってあげたいと願った少年パンチェスタは隠されたヒトの真実を知ることに。
最後のヒトからたくされ、宇宙へとあげられた人類の萌芽は遠いどこかの惑星で根づき、ふたたび生を受けていったのでしょうか。
とても面白かったので、また別の作品を読んでみようかなと思います。
ノスタルジー篇とドタバタ篇もいいかな…
*本のプロ レスより*
まゆ > 「美亜」は梶尾真治のデビュー作で、とっても好きな話です。ただ、この人の書くドタバタSFがどうにもダメで、「黄泉がえり」まで遠ざかってました。この本は好きな系列の話ばかり集めてあって、うれしかったです。 (2003/11/01 00:30)
北原杏子 > まゆさん、梶尾真治はたぶん初めて…だったと思いますが、昔、SFマガジンを購読していた時期に、「猿の手」(「宇宙猿の手」?)とか何とかいうのを読んだ記憶がうっすらとあるくらいです。「黄泉がえり」も面白そうですね。映画は観てませんが… 他の作品にも順次手を出していこうかな、と思案中です。 (2003/11/01 01:08)
マリア > はじめまして 私も時空を越えて二人が愛し合うというところに惹かれて読みました!時間軸の観念が広げられ 遠大なるドラマ、愛する気持ってすごくすごく強いものだと思いました (2003/11/01 21:50)
北原杏子 > はじめまして、マリアさん。
時空を超えた愛…ちょっと照れてしまう部分もありますが、よいですよね。どれもよい作品でした。また何か読んでみようと思います。 (2003/11/01 22:39)
ROY > 多分この中では「美亜」と「時尼」を旧短編集で、「江里」をSFマガジンで読んだと思うのですが、どれもいいですよね。僕はドタバタ系も結構好きなんですけど、ノスタルジー篇の「芦谷家の崩壊」という作品が特に好きです。「愛」とはまた別の感動があります。 (2003/11/04 01:53)
北原杏子 > ROYさん、ノスタルジー篇もいつか読んでみたいと思います。「芦谷家の崩壊」って「アッシャー家の崩壊」からですよね。 (2003/11/04 23:22)