「虹の天象儀」瀬名秀明★★★


虹の天象儀 (祥伝社文庫)

虹の天象儀 (祥伝社文庫)

子供の頃、プラネタリウムが好きでした。空の代わりに人口のドームに映し出された満点の星空。眺めているだけで感無量になります。それに加えて、星空の解説者の人の話を聞くのもまた楽しい。
星々が集まって星座となり、描かれていく夢幻のファンタジー。本物の星空にも負けないほどの輝きがそこにはあったのでしょう。

大人になってプラネタリウムを訪れることはなくなってしまいましたが、この作品を読んでいたら何ともいえない郷愁を感じました。星空に向けられた人の思い… そんなものを感じました。

44年間の使命を終え閉館した渋谷の五島プラネタリウムで27年間勤め上げた主人公「私」のもとを訪れたある不思議な少年…「私」はその少年によって、プラネタリウムを通じて過去へと…昭和20年前後の日本へとタイムスリップすることになる。「私」は何をすることになるのか? その少年の正体とは?


冒頭の五島プラネタリウムの閉館の様子など、事実をよく知らない私でも何か心に迫るものを感じました。
プラネタリウムの投影機に関することなども初めて詳しく読んだようなもので、そこのところは面白かったです。


いきなりタイムスリップするところも、まぁいいでしょう…
実在の人物、織田作之助と出会うシーンもそこそこ感動的。
でもそのあとの、「私」の前に現れた少年の正体とか、ピンとこないところがちょっと…


雰囲気としては「八月の博物館」というところです。どちらにせよ私はそれ以前の作品は未読なのですが。
あの雰囲気は割りと好きだったので、この短編ももっといろいろ書き込んで、長編だったらあるいは…との感想をもちました。




*本のプロ レスより*

まゆ > 私は瀬名さんはこれしか読んでないのですが、やっぱり物足りなさを感じました。だいたい、祥伝社の400円文庫って、みんな長さが中途半端で書き足りない感じのものが多いんですよ。ノスタルジックな感じとか、雰囲気は好きだったんですけど。 (2003/11/17 20:58)
北原杏子 > まゆさん、そうそう、そうなんですよね! 400円文庫って…以前、恩田陸の本を読んだ時にも感じました。何か物足りないような、って。無理して短くするくらいなら…って思ってしまいます。「八月の博物館」もノスタルジックな感じが出ていておすすめですよ〜 (2003/11/17 23:17)