「狐笛のかなた」上橋菜穂子★★★★

狐笛のかなた

狐笛のかなた

上橋さんの久々の新刊…! ということで張り切って(?)読みました。
感想は…

すっごくよかったです。じんわりと涙がわいてきそう。
#実際には泣きはしませんでしたが…(冷血女?)

架空の日本が舞台なのかな。時代設定などはよくわかりませんが…。〈春名ノ国〉という国の、夜名ノ里のはずれに〈とりあげ女〉のばあちゃんといっしょに住む少女、小夜。
彼女には〈聞き耳〉という才能があり、それは人の思いが読めてしまうというものでした。そんな小夜は12歳の頃、あることで傷ついて逃げてきた子狐を助けてあげるのです。それは霊狐という、人間の主(呪者)に魂を握られてその命令を実行する、使い魔の狐でした。
彼ら霊狐は〈あわい〉という空間に生まれ、そこでしか生きられない生き物です。そこで呪者につかまって使い魔にされるのですが。


小夜はこの霊狐〈野火〉をかかえたまま、追っ手から逃れようと、森蔭屋敷への道を進んでいきます。このお屋敷は夜名ノ森の中にあり、里人の出入りを禁止しているほど奇妙な、隠されたお屋敷でした。
小夜はそこであるひとりの少年と出会います。それがその屋敷に匿われた少年〈小春丸〉だったのでした。
このことがきっかけとなって幼いふたりはそれから度々、夜中にひそかに会って胡桃餅を食べたり、かぼそい火を囲んでお喋りをしたり、とたわいない子供の遊びを繰り返すのですが…それにはあっけなく終わりがきて。小夜は二度と森蔭屋敷を訪れることもなく。時が過ぎます。


数年後。小夜は16歳の美しい少女に成長し、その年の終わりの年越しの市である事件が起こるのです。小夜は市庭(いちば)で、ある男と出会い、その男に〈獣の匂い〉を感じ、いつの光景なのかはわからないがある記憶を思い出すのですが、このことがきっかけとなって男に不審に思われてしまいます。
そこを救ったのが鈴という女性。この鈴とその兄大郎との出会いが小夜の運命を大きく変えていくのでした。


ここから先は読んでのお楽しみ。小夜の母親〈花乃〉や父親の存在、小夜の出生、〈聞き耳〉の才、霊狐〈野火〉、森蔭屋敷に匿われていた少年〈小春丸〉の正体などなど…
目も離せない展開です。


人と人、国と国とのあいだにある憎しみが呪いを生み、殺し合いを繰り返す悲しい過去。そのただなかにあって、小夜はどんな選択をするのか。霊狐とはいえ、小夜に強く引かれていく野火、十年間もひとつところに閉じ込められ、やっと表に出てきたかと思ったら、呪いのまっただなかに陥ってしまった小春丸。
様々な人々の思いが伝わってきます。


とくにラスト…! ああいう形でしか幸福を追求できなかったのですね。幸せではあるけれども。
せつないですねぇ。

守り人シリーズのような派手さはありませんが、しっとりといいお話です。理論社のHPに作者の言葉が載っていましたが、小さな力のないものを抱きしめ、守っていくという、上橋さんらしい物語だったと思います。


挿絵を描かれた白井弓子さんの表紙絵も素敵です。青い空を背景に、桜の花咲き乱れる野。そこに夢か幻のように浮んでいる霊狐のすがた。もう一枚の絵として鑑賞したいくらいのイラストです。
試しにカバーをはずしてみると、モノクロで描かれた桜の花びら舞う〈若桜野〉の風景が見られました。カバー絵とは少し趣が違いますね。表紙の中央にいた狐がいなくってあれ?と思っていたら裏表紙にいました。細かいところまで気が配ってあって、すごく素敵でした。

図書館に入る時はたぶん、カバーを密着してしまうために、この美しい本体のイラストが消えてしまうのでしょうね。仕方ないことですが、ちょっと残念です。私は上橋さんだけは!と思い、自腹切って購入しましたが、良かったです。


同じく理論社のHPにてこの作品の序章の一部が読めますので、興味のある方は一度ぜひ読みにいかれることをお薦めします。

http://www.rironsha.co.jp/tokushu/koteki/



*本のプロ レスより*

トントン > HP見てきました!序章だけなのにすごく惹かれてしまいました。表紙も凝っていて素敵なんですね。買いたくなりました。守り人シリーズは未読ですがぜひ機会を見つけて読みたいと思っています。 (2003/12/07 10:18)
すもも > 今日、図書館で新刊予約してきました。読むのが楽しみです。 (2003/12/07 15:00)
ときわ姫 > わあ!全然知らなかった、新刊が出たなんて。それにカバーの事。買っちゃおうかなあ。 (2003/12/07 17:51)
ときわ姫 > わあ!全然知らなかった、新刊が出たなんて。それにカバーの事。買っちゃおうかなあ。 (2003/12/07 17:53)
ときわ姫 > すみません、エラーが出たので二度送信してしまいました。二度目もエラーになったのですが、念のためトップに戻ってもう一度見てみたらこんな事に。あれ以上やらなくてよかった。 (2003/12/07 17:56)
北原杏子 > トントンさん、よかったでしょう? ぜひぜひ読んでみてください。期待は裏切らないと思いますよ。今日、本屋に行ったら、新刊コーナーに一般書と一緒に平積みされていて、嬉しくなってしまいました。あの表紙、目立ちますねぇ…!
すももさん、図書館で早く借りられるとよいですね。すももさんの感想も楽しみにしてますね♪
ときわ姫さん、上橋さんお好きなら是非に!です。カバーのことはまぁ些細なことですが、自分的にはちょっといいかなぁと思って…買う場合のちょっとしたお楽しみ、グリコのおまけ(古い)みたいなものかな。
エラーのことですが、ときわ姫さんのレスだけメールで来てませんでした。それと何か関係があるのかな? (2003/12/08 00:40)
すもも > 図書館で借りてきて、一日で読んでしまいました。よかったです〜。カバーはやっぱり密着されてました。残念。サンタクロースさんも、大人にまでは手が回りそうにないので、自前で買おうと思います。 (2003/12/14 16:04)
北原杏子 > すももさん、読まれましたね(^_^)。良かったでしょう?カバーはまあ仕方ないですね。にしてもサンタさん…大人にも来てほしいですよねぇ(^^ゞ? (2003/12/15 01:26)