「オーデュボンの祈り」伊坂幸太郎★★★★

オーデュボンの祈り (新潮ミステリー倶楽部)

オーデュボンの祈り (新潮ミステリー倶楽部)

年末、実家に帰省している間にやっと読み終えました。
それより以前から読んではいたんですが、ずっと年末のあれこれに煩わされてほとんど読めていない状況だったんです。

最初、この本プロで感想を読んだら、喋るカカシが出てきてそれが違和感…と仰っている方がおられましたが、私は事前に聞いていたせいか?、それとも日頃からファンタジックな読み物に慣れているせいか? それほど違和感というものは感じないですんだようです。
それどころか、ミステリーとファンタジーの中間に位置しているようなこの作品…。とても面白く読むことができました。

不思議な島の情景はまるでヨーロッパのような光景なのでしょうか。広告も何も邪魔なものは何もない、緑あふれる島。あんな島に自分も住んでみたいと思わせられました。
その島に登場してくる人物は誰をとっても変わった人ばかり。
中でも一番は、逆のことしか言えない画家、園山。
始めは単なる変人としか見えていなかったのに、終盤にさしかかりその人の背景が見えてきたとき、逆転しました。
真実を知ってみればなんて哀れな…可哀想な人だったのでしょう。
主人公伊藤の案内役のようなことを買って出た日比野という人物も相当変わっています。
夜を楽しみ、鳥の声にも耳を澄ますような。
島の人々からは特別視されているような彼でしたが、その心には純なものが隠されていたんでしょうね。


そしてしゃべるカカシ!! そのしくみが説明されていましたが、何ともへんてこな理屈じゃないですか!
でもそれでいながら、なんとなくありえそうな感じもしてしまう。単純だけれどいかにも、って感じで。
そういうこともあってもいいんじゃないか…
そんなふうにも思えました。

未来を知り予測することができるカカシ。その彼がずっと百年も前から、今度の事件のことを想っているという… なんともいえぬせつなさを感じます。

それから桜。花の桜と同じ発音をする、彼の存在。それは喋るカカシと同様、不思議で不可解な存在でありながらも、同時に惹きつけられるような。
彼独自の判断基準により、悪人を拳銃で撃ってしまう彼は島の人々からはそういうものとして受け止められているということも不思議なら、その彼独自の判断基準というのが… ただ「うるさい」から、自分の詩のような生活を乱す者を憎むといった理由だったという点。
本当なら許されないようなことも、桜だったら許されてしまう。その不思議さ。爽快さ。

主人公の伊藤の古馴染み、まるで悪徳警官のような城山の最後の運命には本当にすかっとしました(笑)。

全編にわたって何ともいえない不思議感のただよう作品でしたが、読んだあとの感想はまた爽快のひとことにありました。途中ちょっとだれてしまったところはあったけれど、読み終えられてよかったです。

今後も伊坂さんの作品を読んでいきたいと思っています。
#そう思って、年末いろいろ買い込んでしまいました(^^ゞ



*本のプロ レスより*

たばぞう > 私にとって、初・伊坂作品でしたが、もうこの1作で気に入ってしまいました。桜が城山の股間を撃った部分、私、笑っちゃいまして・・・(男性だったら笑えないだろうけど)。桜は荻島では神話的な存在に感じられたので、桜の狙いがあまりにも的を得ていたもので。 (2004/01/02 00:46)
北原杏子 > たばぞうさん、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします〜♪
私も城山の最後に関しては同意見です(笑)。思わず、ざまあみろ!と叫んでしまいそうになりましたよ。
私もこの作品が初・伊坂作品だったのですが、読み応え充分でした。これから他の作品を読むのが楽しみです。 (2004/01/03 23:43)
ココ > カカシが喋るとか桜の行動とか、ファンタジーがまったくダメな私にはちょっと辛かったです。ファンタジーの要素が少しでもあると、私の固い頭が拒否反応を示すのです(涙)。ただ、いつも逆のことしか言わない男は哀しくてとても印象的でした。でも、これでまた伊坂さんにブレイクしそうな方がお一人増えましたね♪ウフフ。私もこの作品意外は大好きなんです。 (2004/01/04 00:35)
北原杏子 > ココさん、明けましておめでとうございます。
そうですね、カカシが喋るとか違和感があって当然なのでしょうね。どっちかっていうとファンタジー?なんでしょうね。ちょっと座りが悪い気もしますが。
ラッシュライフ」もさっそく図書館に予約してしまいましたよ。他にもゲットした本がいっぱい!あとは読むだけ(^^ゞ? (2004/01/06 01:24)