「童話物語 下」向山貴彦★★★★

童話物語〈下〉大きなお話の終わり (幻冬舎文庫)

童話物語〈下〉大きなお話の終わり (幻冬舎文庫)


下巻は一気に読み終わりました。まさにページを繰る手が止まらないとはこれですね。

下巻ではルージャンが光っていました。煙突掃除の部分とか… あのいじめっ子だったルージャンが? いつの間にか成長していたのね、って感じ。ある意味、ペチカよりも目立っていたかも。少なくとも私はそうでした。いつの間にかルージャンに感情移入していました。だから、ペチカが彼のことをまだ許せない、と思ったシーンはちょっとつらかったです。あと最後のところも…まさかこのまま?そんなーっ!?と思ってしまいました。

強くなっていたんですね…ペチカを守り通そうとする彼のすがたにさわやかな感動を覚えました。彼同様、ペチカも強くなっていくのですけど、優しさってのは強くなければ生まれないものなのかもな、と思いました。

強いといえば、下巻から出てきた人物ヤヤも、オルレアも強い女性ですね。それぞれ性格は違うでしょうが。


下巻でいちばん印象が強かったのは、世界の果てにあるという忘れ物預かり所へ行く、というシーン。
#しかし何故にここへ行く?と何度も頭をひねりました。


岩だらけの荒野のなかを突き進む汽車。とってもヴィジュアル的ですね。ちょっと他の何かを彷彿としてしまう点はあるにしても。ヤヤにしても、まるで…と、とある人物を想起してしまいましたし。世界の果てがどうだったのか、忘れ物預かり所で探し物を見つけることができたのか?とてもわくわくしながら読みました。


それにしてもラストもそうでしたが、まるで何かのアニメ映画を見ているような?そんな気がしてなりませんでした。それすら凌駕してしまう物語のおもしろさというものは、すごいとは思いますが。上巻の帯に、エンデやクロウリーの名前が挙がっていますが、私にはいまいちその連想は沸きませんでした。壮大なお話、ということでつけたのかな?…というよりも、やはり宮崎アニメでしょうね。読んでいて何度もデジャヴを感じました。ラスト、光に包まれるところか、天界の塔とか。まるでナウシカ、まるでラピュタ…と。でもそれでもおもしろいから許せます。


この「童話物語」の世界に感動して、次々といろいろな人がサイドストーリーを新たに書き綴っている、という話が解説に載っていましたが、それもそうなのかも。自分もこの素晴らしい世界に飛び込みたい、そう思わせる魅力がこの作品にはあった、そういうことなのでしょう。


最後に記されていた付記によるとこの話は、もっと壮大な話のごくごく一部で、全10巻からなる物語があるとか。
それらが実際にあるとしたら、読んでみたい… と、この物語を読み終わった人ならそう思わずにはいられないでしょうね。
まぁこういうのは設定のみで、実際には書かれないものなんでしょうが。こういう大きな話のごく一部なんだよ、と読者に手の内をちらっと見せてくれる、作者の遊び心みたいなもの?


最後に蛇足として。
私が想像するペチカのその後… ルージャンと…かどうかはともかく(^^ゞ、立派に成長して大人の女性になって結婚して子どもを生んで母親になり…
付記に書かれていた内容を参照すれば、ペチカは頑張ってフィツに再会するために長生きして、ついに神さま(物の神?)になってしまう…ってところかな?


まさに蛇足でした。野暮なことをしました(^^; 笑ってお見過ごしください。


*本のプロ レスより*

ふく > 後半は怒涛の展開で、僕も一気読みでした。謎が謎のまま残ってしまってるところがあったり、色々つっこみどころも多いのですが(笑)、面白いですよね。 (2004/01/09 07:59)
すもも > 興味があるのに、いまひとつ読むきっかけがつかめない本でした。今<読みたい虫>が増殖中です(笑) (2004/01/09 10:35)
北原杏子 > ふくさん、そうですね。面白ければ、何も文句は言いません。これこそ理想の読書の形だよなあなんて、読みながら思ってました(^^ゞ
すももさん、私も長らく積読していたのですが、この度めでたく(?)読了しました。すももさんもぜひ!! これは一度は読んだほうがいい作品だと思います。 (2004/01/10 00:47)
トントン > 私も天界の塔のところで、宮崎アニメがちょっと浮かびました・・・でも面白かったのでよしとしました。
全10巻があるならぜひ読んでみたいです! (2004/01/10 12:12)
北原杏子 > トントンさん、そうですよね。やっぱりそう思いますよね。>全10巻があるなら読んでみたい
作者はこれ以降は全く小説は出していないようですが、他にもぜひ何か書いて欲しいです! (2004/01/11 00:15)