「リアルワールド」桐野夏生★★★
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この作者の本を読んだのは初めての私でした。それでも何の違和感もなくスッと話のなかに入れたのは、この作者さんの文章のウマさからでしょうか。
登場人物は、１０代の高校生たち。私から見たら、銀河系の果てにまで去ってしまったかのような感のある世代の人物たちです。そのせいなのか？ 読んですぐちょっとしたカルチャーショックのようなものを感じてしまいました。
今の高校生って、こんなふうなんだって…
ある意味、興味深くもありました。私が古い世代の人間だからでしょう。こんなふうに考え、こんなふうな行動をとるのか、と。
何と言っても、隣に住んでいるというだけで、ろくすっぽその中身を知らない少年の犯罪に手を貸すような行為をしてしまうなんて！と、正直思いました。それも母親殺しですよ。現実にもそうした事件が時折起きて、そのたびにＴＶのワイドショーを賑わしたものですが。嫌ですね。そういうのって…
最初は４人とも（テラウチは違うかもしれないけど）、興味本位で近づいて、全く無責任な立場から殺人犯の少年を応援していった。それがどんな結果を生んでいったか。
４人ともそれぞれがそれによって変わらざるをえなかった。とくに興味本位で少年ミミズに近づいていったキラリンなんかその最たるもんでしょう。唯一、関わりがないよという顔をしていたテラウチにも、その余波は及び…最後にはあの結果が。読み終わって、虚しい気がしてしまいました。
まさしくリアルそのものという世界。
ミミズに関わってその世界に入ってしまったキラリン（なんていうあだ名！）
愛する母親の裏切りによって悩み、その苦しみゆえに短絡的な犯行を実行したミミズを許せず、密告してしまうテラウチ。
それによって起きてしまった不幸な事故の責任を感じて、あの行動を起こしてしまったテラウチの最後の手紙を受け取ったホリニンナことトシちゃん。彼女はホリニンナという偽名を使うことで、自分を守っていた。また同性愛者であることを隠して生きるか、カミングアウトして生きるか悩んでいたユウザン。
…それぞれ痛い、です。
私には完全に彼女らの悩みを理解できるとは思わないけど、そういう痛みや苦しみの中でそれでも生きていかなければならない現実の厳しさのようなものは感じられます。
重苦しいモノを自分のなかに隠して、へらへら笑っていたあのテラウチの手記を読むと、何かこうぐっときますね。言葉でうまく伝えられないのですが。共感できる部分があるような気がしました。
＃でもミミズに関しては全く共感できない、私だったら絶対にお近づきになりたくない人物です。
それにしても作者である桐野さんは、本当に１０代の少年少女の描写がお上手ですね。まるでそのものみたいな。本来思春期にあたる人がみたらどう思うかはわからないけど。真に迫ってるというか。どうしてこんなふうに書けるのか、って思います。以前、桐野さんが朝の某ＴＶのゲストとして出ていらしたのを偶然見たのですが、興味の向きがお若いというか…(^^)ホストクラブに通っていた話など聞くと、ああいうところから情報を仕入れるのかな？なんてね。ちょっと思いました。
＊本のプロ レスより＊
ココ ＞ 私はこの本苦手でした。というか、こういう高校生を理解できないし、したくもないと思って嫌悪感が先に立ってしまったからなんです。私も若くないってことなんだなーなどと感じました(笑)。ラストが少し意外で驚きましたが、今思うと、桐野さんの創作上の潔さだと感じ好感が持てます。「OUT」や「グロテスク」もおもしろいですよ〜。 (2004/01/19 10:01)
北原杏子 ＞ ココさん、私も嫌悪感はありました。話的には面白かったけれど、あの高校生たちの考え方や行動は理解できないし、何といっても私の高校時代とは100万光年もかけ離れている、と感じてしまうのですよね。
今は「グロテスク」読んでます。こちらはすごく面白いです！もう、のめりこんで読んでます(^^ゞ 「ＯＵＴ」は古本屋で、100円でハードカバーの本が売っていたので買ってしまいました。そのうち読む予定です。 (2004/01/20 00:03)
あさこ ＞ おもしろかったけれど、私の母もこの本は苦手のようでした。私はけっこうドキドキしながら読みました。考えや行動も理解できない！とまでは思わなくて、でも、共感した！というわけでもなく、そういうところが「リアル」なのかなぁ、と思いました。「グロテスク」はおもしろいですよね〜。読んでて時間を忘れました。 (2004/01/21 00:53)
北原杏子 ＞ あさこさん、お母さんと一緒に同じ本を読めるなんて何かいいですね。私もちょっと理解できないところはあったけれど、話は概ね面白かったです。
「グロテスク」面白いです、いま夢中で読んでます。 (2004/01/21 21:37)
