「フォトジェン」ジョージ・マクドナルド★★★

フォトジェン

フォトジェン

魔女のワトーに育てられた昼の少年フォトジェンと夜の少女ニクテリス。フォトジェンは昼は外で一日じゅう狩りをして、夜は絶対に城館の外には出ないようにと命じられ、昼の世界しか知らないように育っていき。ニクテリスはエジプトの墓を模した洞窟の一室に入れられて、16年間外の世界を知らずに育ってきた。


そんなある日、ひょんなことでニクテリスが洞窟の外へ出てきてしまう。部屋に唯一あったランプが地震で割れ、暗闇になったのに驚いて出てきたのだ。初めて見た夜の世界。それは自分の部屋のランプの明かりしか知らない、ニクテリスにとってどれほどの魅力にみちていたことか!月の光に魅せられ、木々や花々の香りに魅せられ、ニクテリスはひそかに夜、外に忍び出るようになる。

一方、昼じゅう狩りに明け暮れて、夜には恐怖があるとワトーに聞かされて育ったフォトジェンは、あるときふとしたことがきっかけとなって日没後も館にもどらず、初めて夜を目の当たりにする。それはフォトジェンにとっては恐怖そのもので…苦しむフォトジェン。しかし、やがてふたりの少年と少女が出会うときが訪れ…


…というお話です。
初めて外にでて、夜の世界の素晴らしさに酔いしれるニクテリスの描写がとてもよかったです。月の光、川のせせらぎ、花木の香り、肌に触れるやさしい風…それらがやわらかで、細やかな筆致で描かれています。この部分だけでも読む価値あります。


挿絵・表紙絵のナニー・ホグロギアンの絵も素敵です。ファンタジーの香りがします。文章はまあ読みやすいほうだと思います。けれど地の文が続くので、普段会話文の多い本を読みなれている方には読みづらい、のかもしれません。が、ところどころ、意味がよくわからない部分がありました。不死身になった魔女が使ったフォトジェンの矢の意味とか。それまで何もそんなこと一言も書いてなかったのに、あれ?と思いました。


あと昼の世界と夜の世界、ということでどこかに似たような話があったような…?世界の民話とか童話とかにあったのかな。壮大なファンタジーというわけではないけれど、心に残る小品でした。


*本のプロ レスより*


ぱせり > こんにちは。今頃、こんな奥のほうにお邪魔してすみません。北原さんの感想読みたくて、さがしちゃいました。
本当に初めて外に出た時の夜の世界、素晴らしかったですよね。わたしも一番好きな部分でした。風を初めて感じたときの感じ方(見えないやさしい生き物)がすてきで、本当にこの部分だけでも読む価値ありますよね。
フォトジェンの矢の意味、そうですよね、魔女がフォトジェンをいじめていたページにも、書いてなかったし…「?」と思いながらも、さっさと飛ばしてしまいました。イラスト、ますます見たくなりました。 (2004/12/07 09:57)
北原杏子 > ぱせりさん、表紙イラストどこかにないかと探してみましたら、新樹社のHPに出ていました。http://www.shinjusha.net/young/child01.html
ぼや〜っとした感じでちょっとよくわからないんですが。中の挿し絵も文章と一体化している感じで、とてもよかったですよ。借りられるとよいですね。私もまた見たくなってきました。近くの図書館においてあればいいのに、どこか遠くから回ってきたので、すぐに!というわけにいかないので残念。こういうときは手許に本があったほうがいいですよね。
矢の詳しい説明に関しては、原書でも記述がなかったそうです。これは、あちこちネットを探していて見つけました。 (2004/12/07 23:23)