「ワニ ジャングルの憂鬱 草原の無関心」梨木香歩★★★

ワニ―ジャングルの憂鬱草原の無関心

ワニ―ジャングルの憂鬱草原の無関心

理論社から出ている、梨木さんの絵本シリーズの一冊です。絵は「ペンキや」の出久根育さん。カラフルなジャングルのイラストが素敵です。


話は、いばりんぼうで自分勝手なワニのお話。どういうところが、というと自分の兄弟を食べてしまったり、カワウソの巣が気に入ったので自分のものにしてしまうとか、美味しそうなインパラが通りかかったら、夕ご飯のおかずになってもらう、とか。まぁ、自然界に住んでいるワニなら当然の行為なんでしょうけど。


そこにカメレオンが出てきて、ワニはそれも食べてしまおうとするが、そこでカメレオンが自分の仲間を食うのか?という問いかけをワニに対してするわけです。ワニもカメレオンも爬虫類だから…
自分の仲間? 仲間だから食ってはいけないというのはおかしい、そんなものは都合のいいまやかしで、
「世の中には、自分と自分でないものがいるだけなんだ」
と言う、自己中心的なワニも自分に襲いかかる運命からは逃れられず、結局はサバンナのライオンに食われていく……
なんという自然の過酷さ。非常さでしょうか。


けれどそんなことなど知らぬげに、動物たちは大自然のなかでゆうゆうとそれぞれの営みを繰り返している…
それが、色彩豊かな出久根さんのイラストと、梨木さんの文章によって鮮やかに描き出されています。
ぼーっと何も考えずに絵だけ見ていてもいい感じ。
爬虫類はどちらかといえば苦手な部類に入る私ですが、楽しめました。