「新版 指輪物語 追補編」J・R・R・トールキン★★★★

新版 指輪物語〈追補編〉

新版 指輪物語〈追補編〉


私が「指輪物語」を最初に読んだのは、今から○十年ほど昔、高校生の時でした。おそらく「指輪」を読もうとしたほとんどの人はそうかもしれませんが、最初の30ページほどがどうしても頭に入らなくて延々と読んでいたので、なかなか本編に入れなかった、という思い出があります。
でもやっとそこを何とか読み通し、本編に入ったら面白くて、すっかり引き込まれてしまい、時間はかかったものの読破しました。
私が持っていたのは旧版、あの米粒のように活字の小さい文庫本だったのですが、欲をいうなら立派なハードカバーの本(赤表紙本)で読みたかった…でも当時、お金のない貧乏学生にはしょせん無理な話。学校の図書室にあったらよかったけれど残念なことになくって。当時の私は公共図書館を利用しようなどという頭は全然なかったので、諦めて文庫本を買ったという、次第です。


この追補編はじつは当時、存在すら知っていなかった。
シルマリル」(「シルマリルリオン」かと思い込んでました、ずっと)は短大の頃に、県立図書館で借りたものの読めずにそのまま返してしまい、今に至っています。
本編の「指輪物語」事体、一回読んだきりでそのまま書棚で眠っていました。何より、あの小さい字でもう一度読む気がどうしても起こらなかったから…


それが一昨年(か、それより前?)突然、降ってわいてきた映画化の話。最初聞いたときは思わず、うそでしょ?と思いました。あんなマニアックな小説が映画化されるなんて到底信じられなかったのです。しかもあれほどヒットするとは!
今まではタイトルを言っても、知らない人がほとんどだったってのに、今じゃあの映画の原作だと言えばおそらく知らない人は皆無に近い…んじゃあないでしょうか。


私も一作目を見る前におさらい、ということで新版の「指輪」を購入して再読しました。面白かった。で、一回目に読んだときよりも話に入りやすくなってる、すらすら読める。そのことに妙に感動してしまった私でした。
内容に関してはほとんど記憶が薄れてて、初読と変わらない部分はあったのですがね。もっと長いかと思っていたのに、拍子抜けするほど短く感じられました。


さて前振りはこの辺で。(長すぎる…!?)
この追補編は存在自体も知らなかった私。映画化によって新版の「指輪」が出てから、へぇ〜こんなの出てたんだ、でもハードカバーだけ?どうして文庫出てないの?と思った。そのまま文庫が出るまで待っていればよかったのに、古本屋で1500円で出ているのを見かけて即購入。でもすぐには読めなくて、そのまま積読していた。そしたら今年に入って、ついに文庫が出てしまいました(チャンチャン)。


それが、3作目が公開されてやっと重い腰をあげてやっと読む気になりました。というより、「王の帰還」の映像にとりこになってしまい、その夢から覚めない状態でこの追補編を手にとってしまった、という感じです。


で、感想ですが。これ、まるで歴史の教科書を読んでいるようですね。歴史はどちらかというと苦手の部類に入る私には、ちょっと読みにくい部分がありました。おかげで一週間もこれにかかりきりでした。
何よりも人の名前が覚えられない。似たような名前が多すぎます。
最初のヌメノールの国もそうでしたが、これが滅亡してから新たに起こった王朝がわかりにくい。
北方王朝と南方王朝に分かれていてこれだけでも?なのに、さらにそれが、北方王朝では3つに分かれることになってしまい、また頭がこんがらがりました。南方王朝の方でも、要するにゴンドール国のことですが、これがまたやたらと王さまが多い、んですよね。ナントカ一世、二世だとかがやたらといる。おまけに途中から王さまがいなくなって執政家へと移行したりして。


この部分を読むだけでも、ちょっと読んではまた前に戻る、を繰り返していました。まさに歴史の教科書を読んでいる気分でした。
でもそれも、だんだんアラゴルンやそのほかのなじみ深い人物が出てくるようになると違ってきました。
何より、アラゴルンという人のことを初めて知ることができたので、これだけでも読んでよかったと思えるようになりました。
アラゴルンとアルウェンの出会いと別れも初めて知って、そうだったのか、と目からウロコが落ちました。
これでまた「指輪」を再読したら、また違った面が見れるかもしれません。


指輪の仲間のその後の人生も興味深く読みました。全体に楽しんで読めましたが、唯一そうでなかった部分。
それは西方語およびエルフ語に関する記述です。書き方や綴り方だの、発音の仕方だの、母音だの子音だの…言語学者だったトールキンの趣味の世界ですね(笑)。
私にはここまで理解できません。すごいとは思うけど。ここだけは文字を目で追うだけでほとんど流し読みでした。
単語が読めなくて、独り言みたいにぶつぶつ呟いていたら、隣にいた旦那に思い切り気味悪がられました(^^ゞ


でも、こうして苦労して読んだおかげで、この壮大な話がようやくわかるようになってきました。
これで勢いにのって、次は「シルマリル」かな?と思えるようになりました。「終わらざりし物語」も気になります。指輪貧乏な私ですが(^^ゞ また買ってしまいそう…



*本のプロ レスより*


すもも > 『指輪』は深い。改めて思いました。じっくり読み直す時間が欲しいです。今は『僕指』読んで満足しています。 (2004/03/03 10:09)
北原杏子 > 私も『僕指』(っていいですね、真似しちゃいました)買いました! 結構、うまくまとめてありますよね。
黒沢清さんのインタヴュー記事がやはり面白かったです。「選ばれた者しか最後まで行けない」物語。一生かかって読み続けていってもいいほど、深いです… 今、時間がなくても本は永遠に待っていてくれるわけですから。ページを開けば、すぐにそこには中つ国がある、というわけで… 私もまたいつか時間を作って再読したいものです。 (2004/03/04 00:21)
ときわ姫 > たぶん積読になるのに決まっているのに昨日これの文庫版を買ってきてしまいました。
私も古い版の文庫を持っているのです。北原杏子さん、あの文庫の最後の「王の帰還」の後に「追補編」が付いていますよ。でも全部じゃないんです。「ホビット庄暦」までであとは省略されてます。それでついふらふらと買ってしまったわけ。見比べてみてびっくり。前の文庫、字が小さい!いや小さいとは思っていたけど、比べるとその小ささにめまいがしました。これでは本編も読み直す気にはなれないなあ。いつか読み直す時には図書館であの大きな本を借りる事にしようと思いました。 (2004/03/05 10:23)
kazano > うーん、高校の時にコレをリクエストして、読んだのがワタシともう1人の中山星花ファンの友人だけでした。それでもラストは印象に残っています。「これがゴクリの役目か…」と思って呆然とした思いがありました。 (2004/03/05 23:16)
たばぞう > 北原さんの今までの人生での指輪物語との関わりについて、面白く読まさせて頂きました。私は映画以前は「指輪物語」の存在は知っていても、ファンタジーは苦手分野だったし、しかもすごい長編ということで、読む気なんて全然なかったんです。「シルマリル」についてですが、「シルマリルリオン」でも間違いはないんですよ〜。原題は「The Silmarillion」となっていますし、「クウェンタ シルマリルリオン」という章もあります。そういえば昔、札幌に「クウェンタ シルマリルリオン」という名前の喫茶店(!!)がありました。とても綺麗なお店でした。当時は「指輪物語」との関連なんて全く知りませんでしたが、語感が面白くて店名だけは忘れずにいたんです。で、一昨年「シルマリル」の本の中に、「クウェンタ シルマリルリオン」の章を見つけた時は、「ありゃ、喫茶店と同じ名前」と思ったものです(笑)。 (2004/03/05 23:27)
北原杏子 > ときわ姫さん、そういえばついていたような気も(^^ゞ>追補編。文庫版を買われたんですね。いいなあ、私はハードカバーを先に買っちゃって後悔しました。もうちょっと我慢してればよかったのにね。どうせそれまでは積読だったんですから。字、確かに小さいですよね。私もあまりの小ささに涙を流しながら読んだもんでした(^^; 今の版はそれを思うと読みやすかったです。でもホントは瀬田さんの訳のハードカバーで読みたかったんですけど。復刊リクエスト出してます。
http://www.fukkan.com/vote.php3?no=8388
kazanoさん、私も高校のときにハードカバーをリクエストすればよかった、と激しく後悔してました。でもkazanoさんの場合のように、やっぱり自分以外読む人がいそうもなくて、気がひけてました(^^ゞ kazanoさんは同じご趣味のお友達がいてよかったですね。ちょっと羨ましい。私はひとりでこつこつ読んでました(^^;
たばぞうさん、つい長々と思い出話を書いてしまいました。「シルマリルリオン」が原題であることはあとになって知りました。記憶違いかもしれないけれど、私が最初に借りた本には「シルマリルリオン」とあったような気がしてました。
茶店にその名前がつけられているなんて素敵ですね! やはり「指輪」と関連があるのでしょうか。指輪ファンの方がオーナーだったりして。いいなあ、そんなお店あったら入ってみたいです。 (2004/03/05 23:49)