北海道の自然を舞台に・・・

空のてっぺん銀色の風 (文学の森)

空のてっぺん銀色の風 (文学の森)


児童書、それもこの夏の課題図書になっています。
対象は小学5、6年生ということでしたが、なかなか読ませるものはありました。


小学6年生のつかさは、クラスメイトのおとめが苦手でした。おとめ、といっても、女の子ではありません。名前が早乙女力というので、あだながおとめ、なのです。
でもそのあだなにふさわしいように、おとめは色白でほっそりと痩せていて、声も高いししぐさも何となく女っぽい。そのうえ、花が咲けばうっとりと見とれ、空を見ては美しいねと涙ぐむ。おとめチック(なんて古っ)な男の子なのです。


だからつかさはおとめのことが苦手なわけですが。
おとめと違って、つかさは運動神経がよく、スケートもうまいし、グラウンドでサッカーボールを追いかけてるほうが断然好きな、まさに男の子!を絵にかいたような男の子なのです。


そんなふたりがとある事件をきっかけに、だんだん互いの存在に気づき、心を通わせていくのですが…。
とある事件というのがまたちょっとふしぎな話。
学校のそばにある森、かえらずの森には守り神が棲んでいて。おとめを探して森に踏み込んでしまったつかさ。ふとしたはずみで、この守り神といさかいを起こしてしまい、それに巻き込まれた形で、おとめの身の上に変化が起こってしまうのです。


つまり、おとめの姿がシマフクロウのすがたに、と…。しかも昼間は人間のすがたでいられるけど、夜はフクロウのすがたにもどってしまうという。


有名な昔話(童話?)を思い出してしまう、この設定でしたが。この話の場合も、キーポイントは“愛”だったのだと思います。


最初は、おとめのことを女っぽくて気持悪いやつ、くらいにしか思ってなくて、クラスでおとめが浮いていても、みんなからからかわれ、いじめられていても、そのみんなといっしょに笑ってみていた記憶しかなかったつかさ。
そのつかさが、この事件をつうじて、おとめの心の真実を知って、だんだん共感をもつようにまでなってく。


人間か、フクロウか。どちらの道を選ぶ? 森の守り神にそう問われて、おとめが最終的に選んだ道・・・


それは、つかさのおとめへの友情、そんなものがあってこそ、なされたものだったでしょうね。


この頃の子どもって、思春期の入り口に立ったようなもんでしょう。その頃に、こういう話を読むことはとてもいいことのように思えます。

自分と他人との関わりあいについて、そんなことを考えるよい機会なのではないでしょうか。


北海道の豊かな自然を背景にした、気持ちのよい物語でした。