これは、あなどれない!笹生陽子


きのう、火星に行った。 (わくわくライブラリー)

きのう、火星に行った。 (わくわくライブラリー)


この本は最初、図書館から受けとったときに、ちょっと低学年向けかな?と勝手に思ってしまったのでしたが。
表紙の、インパクトありすぎる絵のおかげなのかもしれない。
でもその誤解は読んですぐに改まりました。


私はこの本をあなどってみていました、そのことをここに告白します。
そしてそうじゃなかったことに、もっともっとすごいものがここには詰まっていたんだってことに気づかされ、一種の衝撃をうけたほどでした。


これはあなどれない・・・そう思いました。
こんないい作品を、子どもばかりに読ませていてはならない、とも(笑)。


主人公の山口拓馬は小学六年生。でも彼は何につけても頑張るということを知らない、感動のうすい男の子だった。
いつもつまらなそうな顔をして、教室では居眠りばかり。
成績はいいのに、自分から頑張るということを知らないから、ケアレスミスが多い。先生から指摘されても、どっちでもいいと流すばかり。


何につけてもそこそこ出来て、適当に流しているだけ。
そんな拓馬に、ある日事件がやってきた。
学校の体育大会の選手に選ばれてしまったのだ。
仕方なく受け入れた拓馬だったけれど… いっしょにハードル競争にでることになったでくちゃんという子がまたえらく熱心で。
その熱心さにひきずられるように、練習に参加する拓馬なのだった。


…と、いうふうに始まるのでしたが、他にも問題がいろいろ。
同じ学校友達の木崎と谷田部との関係。クラスの委員長の女の子のことなど…いざこざが起こるのです。


そして拓馬の家庭の問題も…
ずっと病気で静岡のおじさんの病院にいた弟の健児が元気になってもどってきて、拓馬といっしょの部屋になって。弟の言動にいちいちふりまわされる拓馬でしたが…


ハードルの練習で河原にいったこととか、その河原にいた“オオカミ”のこととか、拓馬と違って何事にも一生懸命なでくちゃんのこととか、懸賞であたったゴーグルをかければ火星にもいけちゃうようなすごいものだと思い込んでた健児のこととか。


いろいろあって、やがて次第に変わっていく拓馬のすがたを見てるだけで、う〜ん何かいいなぁ、と思ってしまった私でした。


とくに冷めてる印象だった拓馬が、あることでがらりと行動を変えたときのことなど。印象にのこります。
その時はある人に対する意趣返し・・・のようなつもりで、やっていたのにいつのまにか…ってところがよかったです。


それとね、でくちゃんなんてあだ名しか呼ばれてなかった子が、ハードル競争でゴールした瞬間、初めて自分の名前を叫ぶとこ。
そこなんかもよかったですね。ほんと初めて名まえが出てきて、そうだったのかーっていう感動ありました。


頑張るなんてめんどくさい、カッコ悪い。どうせできっこないからって、何にも努力もしないで最初からあきらめていたら、何にもなれないってこと。
そういうことを思いました。私にとっては苦い言葉です。


人間、本気を出さずに、サボっていると、本気の出しかた忘れちゃう・・・でくちゃんを落ち込ませたというサッカーコーチの言葉も、心にしみました。