原爆の恐ろしさ
- 作者: こうの史代
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2004/10/12
- メディア: コミック
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このマンガはずっと気になっていたのに、自分で買って読もうとしませんでした。
それが、このあいだ図書館で見かけたもので、えいやっ!って感じで、借りてきてしまいました。
私が買い渋った理由というのは・・・
本音をいえば、やっぱり怖かったから、というのが当たっているでしょう。
ヒロシマを描いた作品となれば。
心が重たくなってしまう。できれば触れたくはなかった。
勇気がない私でした。
一読後、思っていたのとはまた違った方向から、それはやってきました。
それ・・・感動とかいうきれいごととは違う、いってみれば心のうねりとでもいうのでしょうか。
あの日、広島に起こったこと、原爆というのはほんとうに現実のことだったんだな、と。
普通の人びとの生活をたんたんと描くことで、そのことが鮮やかに伝わってきます。
「夕凪の街」はとくに衝撃でした。最後の真っ白い余白。
それが示すものに気づいて。最初は戦後の、ささやかな幸せのなかに生きていると思った主人公が。
そうじゃなかった。まだあの日を引きずっていて、生きのびてしまった自分が幸せになることを許せないという気持ち。
それが何ともいえず、ショックでした。
「桜の国」でもそれは同じことだった。一見、平和そうな桜の木のしたで。でも全然、終わってはいなかった。
そのことに気づいて、ショックを受けてた私でした。
あの日は、今でも終わってはいないのでしょうか。
時代も場所も違う現代に住む私には、ただの悲しい歴史としか見えていなかった、目をそらしていた事実。
それをこの作品は、普通の人びとのすがたを通して教えてくれました。
高校の修学旅行で広島を初めて訪れ、平和公園の原爆資料館に圧倒されていた私。
入って最初に目にした、焼け爛れた人形の模型にショックをうけ、それ以来できれば見たくない、触れたくないと思ってきました。
ただ恐ろしいこととしてしかインプットされてこなかった。
でもそれが違うのだということ。いつまでも現実のこととして重みを引きずっている人が
いる。それだけに、原爆というのは途方もない、あってはならないことなのだと…。
そのことを忘れてはいけないと思いました。
何かのかたちで、そのことを次の世代に伝えていくこと、それがいま生きている私たちの
義務、なのかもしれない。重いですが。
こうのさんの漫画は初めて読んだ私ですが、じっくり読めてよかった。
自分でも買おうかな、と思いました。