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幽霊の恋人たち―サマーズ・エンド

幽霊の恋人たち―サマーズ・エンド


もうだいぶ前に買った本でした。
たぶん、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの『九年目の魔法』を読んだ時に、触発されて
買ったのだったわ。それがちょっと時機を逸してしまったら、もう数年放り出したままに
なってしまったのでした。今回、読めてよかったよかった、ってわけですが。


何故これを買ったかというと、中に「タム・リン」のお話が入っていたから、なのです。
タム・リンというのは、妖精譚などに出てくる人物です。
妖精の騎士とか、吟遊詩人とかいわれています。


このタム・リンがあるとき妖精の女王に気に入られ、さらわれてしまって、
七年間妖精の国に囚われの身になっていた、という話。
タム・リンが妖精の女王から自由の身になるためには、人間の女の助けが要ったのです。
七年目の最後の日、ハロウィンの夜に妖精たちのなかから自分を見つけ出し、(それには目印がある)何があっても手を離さないで欲しい、というものでした。


この物語に出てくる女性、ジャネットは貴族の娘ということになっています。といっても、本当は「田舎地主」のようなものにすぎなかったのかもしれないけれど。
このジャネットが近くの森を散歩しているとき、タム・リンと出会うのでした。

ジャネットはタム・リンに夢中になって…やがて、とあるきざしが訪れます。
そのため、上記のようなこと(タム・リンを逃がすために)を実行することになるのです。


イギリスの美しい田園地帯を舞台に、「丘の人たち」という名前で呼ばれる
(妖精と呼ばれることは嫌っているらしい?)人たちの出てくる話。
タム・リンは元々は人間だったのだろうけれど、妖精の国に囚われているうちに、
妖精と似たようなものになってしまっていたのかな、なんて思いました。
それが人間として復活するためには、人間の女性の深い信頼と愛情が必要なのだという。
他にもこんな話、あったような?
いろいろ思い出していました。
これはきっと、民話や伝説を下敷きにした話だから、こういうことも起こるんでしょう。


このアン・ローレンスという作家もですが、他にも先にあげたジョーンズ等、多くの作家が
この伝説をそれぞれの持ち味でうまく生かして、新たな物語として生まれださせているのでしょうね。


そうしたちょっと不思議なものたちがでてくるお話が、次々に語られていきます。
夏の終わりに訪れた流れ者のレノルズさんが、三人の娘たちにお話をせがまれて
思いつくまま話していく、という格好で。


「幽霊の恋人たち」などとタイトルがついていますが、もちろん本当に幽霊の恋人について
書かれた話もあるけれど、違った意味合いで書かれたものも多いです。
つまり、この世のならざるものたちについて、書かれたお話ですね。


それぞれ興味深い話ばかりですが、そうしてレノルズさんが語っていくうちに、
三人娘の長女、ベッキーにある変化が訪れていきます。季節ごとにみせるベッキー
表情の変化など、その過程がジーンときました。
つまり、子ども時代を抜けて、だんだん大人の世界へ入っていこうとする少女の物語、ですね。
この本は、そういうふうにとることもできます。庇護の必要だったかよわい少女が
いつのまにか自立して、自由な世界へ羽ばたいていこうとする。
とてもいい話だと思いました。
「最後の話」で語られた、思わせぶりなエピソードで今後のベッキーの運命がちらりと
見えるようで、まずまず幸せな結末を迎えるような、そんな予感がします。


最後に・・


こういう構成の作品、他にもありました。エリナー・ファージョンの『リンゴ畑のマーティン・ピピン』。
ちょっと似ているような気がしました。



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真実の種、うその種 (ドーム郡シリーズ)

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魔術師の娘 (魔術師ベルガラス2 ハヤカワ文庫 FT (395))

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ペギー・スー(1) 魔法の瞳をもつ少女 (角川文庫)

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不死鳥のタマゴ (1) (あすかコミックDX)

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